共有されなかった危機感
TPP交渉合意に至らず
7月28日からハワイで開催されたTPP(環太平洋経済連携協定)交渉の閣僚会合は、同31日に、期待された大筋合意に至ることなく閉幕した。日本経済団体連合会の榊原定征会長は、「期待が大きかっただけに、大筋合意に至らなかったことは極めて残念である」とコメントしたが、この思いを共有した方は少なくなかっただろう。
TPP交渉の大筋合意は従来、何度も見送られてきた。しかし、今回の閣僚会合で大筋合意に至るとの期待はこれまでになく高かった。というのは、今回大筋合意に至れなければ、TPP交渉は長期間漂流する、との危機感がTPP交渉参加国閣僚の間で共有されていると思われたからだ。
閣僚会合前、TPP交渉を担当する甘利明経済財政担当相は、「この会合を最後の閣僚会合にしたい。各国の閣僚も同じ思いを共有している」(毎日新聞、7月29日)と述べていた。来年秋に大統領選を控える米国の政治日程を考えると、今回大筋合意を逃せば、「数年間は合意が大変困難になる」(ロブ豪貿易・投資相、Australian Government News、7月27日)。
その危機感が、参加各国閣僚に歩み寄りを促すと期待されていた。残念ながら、この危機感を共有していたのは、参加閣僚全員ではなかったようだ。
決裂の直接の原因は
ニュージーランドの強硬姿勢
報道によれば、大筋合意見送りの直接の引き金を引いたのはニュージーランドだったようだ。国内大手各紙は、「ニュージーランドが乳製品の輸入拡大で強硬姿勢をとり続けたことが合意見送りの主因となった」(日本経済新聞電子版、8月1日)と報じている。
ニュージーランドは、近年の自由貿易協定(FTA)交渉において、すべての品目での関税撤廃を約束している。そのため、相手国にも「原則関税撤廃」を強く求め、特に、主要輸出産品である乳製品の自由化を最重視している。日本が同国からの二国間経済連携協定(EPA)締結の提案に応じてこなかったのもそのためだ。