格差社会の中心で友愛を叫ぶ
【第14回】 2010年3月19日
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西川敦子 [フリーライター]

“勝ち組”の足元にも死の落とし穴!?
自殺大国ニッポンで男たちが死に急ぐワケ

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 専門学校を卒業後、就職したものの、待っていたのは実働1日15時間という長時間労働。新人研修もろくに受けないまま、飛び込み営業とサービスをかけもちで担当させられ、ミスがあれば叱り飛ばされる。まさにブラック企業の典型だった。ちなみに給与は月に手取り16万円ほどしかなかったという。

 やがて、心身に異変が起き始める。倦怠感が募るばかりではない。気づけば、髪がほとんど抜け落ちていた。ほうほうの体で実家に戻ったが、どうにも気力が出ない。就職活動もできず、週に何日かアルバイトするのがせいぜいだった。

 だが、正規の職に就かない息子を親はどう受け止めていいかわからなかったようだ。親子仲は日増しに悪くなり、加藤さんはいたたまれなくなってしまった。

 「『人並みに頑張れば人並みの幸せが得られるはず』と親は信じていた。無理もないです。彼らが若かった時代は、それが常識だったんですから」

 正社員が大量採用され育成された親たち世代とは違う。自分たちは使い捨てられていくだけの世代なんだ――そう感じずにはいられない。

 とはいえ、このままフリーター生活を続けていれば、いつか生活が破綻することは目に見えている。毎晩、不安と恐ろしさで眠りにつけず、うとうとすれば寝汗でシーツがぐっしょり濡れた。

 そんなある夜、台所からひそかに包丁を持ち出した。

 「腹を割いて死のうと思ったんです。だけど、実際に刃を突き立ててみると、『この方法で死ぬのはかなり難しいぞ』と感じました」

「今の自分」を受け入れる
どん底から再出発する人々

 自殺未遂の人は、少なくとも死んだ人の10倍以上いるとされる。つまり、年間22万人以上の男性たちが、自らの命を断とうと試みていることになる。

 未遂とはいえ、失敗して後遺症を引きずってしまう人も少なくない。再度自殺を試みる人も多いという。

 だが、加藤さんはこの失敗を機に変わった。

 「あらためてわかったんですよ、オレはほんとうに最低の人間だ、と。それなら、今の最低の自分を受け入れることからスタートしてみよう、と思い直した。

 もともと自分の夢はひとりで世界中を旅することだった。じゃあ、その夢のために、もっと安定した、使い捨てられない仕事を必死で探したらいいじゃないか、と考えたんです。それまでは、親の言うまま学校を卒業すれば自動的に仕事にありつけるものとどこかで思ってた。でも、そうじゃない。自分の頭で考え戦略を立て、行動しないと職は得られない。それでダメなら死のう、と腹をくくった上での再出発でした」

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西川敦子 [フリーライター]

1967年生まれ。上智大学外国語学部卒業。編集プロダクション勤務を経て、独立。週刊ダイヤモンド、人事関連雑誌、女性誌などで、メンタルヘルスや介護、医療、格差問題、独立・起業などをテーマに取材、執筆を続ける。西川氏の連載「『うつ』のち、晴れ」「働く男女の『取扱説明書』」「『婚迷時代』の男たち」は、ダイヤモンド・オンラインで人気連載に。


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