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鈴木寛「混沌社会を生き抜くためのインテリジェンス」

「大学に文系は要らない」は本当か?
下村大臣通達に対する誤解を解く(上)

鈴木寛 [文部科学大臣補佐官、東京大学・慶応義塾大学教授]
【第36回】 2015年8月17日
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いったい何が起きているのか?
国立大学への大臣通達に思わぬ波紋

下村文部科学大臣が国立大学法人の学長などに発出した組織・業務見直しの通知が、波紋を広げている。「文系学部軽視」という批判は、的を射ているのか?

 こんにちは、鈴木寛です。

 下村文部科学大臣が6月8日に国立大学法人の学長などに発出した組織・業務見直しの通知が、波紋を広げています。全10ページにわたる、多岐にわたる項目を含む通知文の一部に、「教員養成系と人文社会学系の学部・大学院について、18歳人口の減少や人材需要等を踏まえた組織見直しを計画し、社会的要請の高い分野へ積極的に取り組むこと」を求めた内容が含まれていたために、マスコミやそれを読んだ一部の大学関係者に「人文・社会科学系のいわゆる『文系』の学部はもう要らないのか? 」と、受け止められ、波紋を広げています。

 マスコミでも「大学を衰弱させる『文系廃止』通知の非」(日本経済新聞社説7月29日)、「文系男への逆風」(産経新聞産経抄7月20日)といったトーンで、報じられています。

 そもそもこの通知は、第三次中期目標・中期計画の策定にあたって、これまでのいくつかある規定路線を1つにまとめて、国立大学に対して確認的、事務的に通知する性格のもので、なにか新たな政策方針を打ち出すものではありません。ですから、文部科学省としては、特段、記者会見なども行っていませんし、省内で特別の会議を開いたわけでもなく、正直、予想外の報道ぶりと反響に、文部科学省内は大変困惑しているというのが実情です。

 こうした報道を受け、私も改めて担当者を呼びましたが、確かに、このような表現をすれば、粗探し、揚げ足取り、曲解報道が常の一部のマスコミにまんまとハメられるのは当たり前、このようなマスコミの対応にまで思いがいたらなかったことは、コミュニケーターとして、もっと勉強が必要だと注意しました。その点は、率直に反省すべきだと思いますし、文部科学省の組織としてのコミュニケーションについての洞察、文章チェック力も組織として見直すべきだと思います。

 しかし、文部科学省内部には、後で詳述しますが、文系軽視や文系廃止との思いは全くなく、文部科学省の真意とは全く異なる「文系学部軽視」というメッセージがウォールストリートジャーナルにまで掲載され、世界中に報じられてしまっているのは、国益上も由々しきことだと、憂慮しています。先日、米国の大学の友人からも、もう国際的な共同研究はできなくなるのかと、心配されてしまいました。

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鈴木 寛 [文部科学大臣補佐官、東京大学・慶応義塾大学教授]

すずき・かん/元文部科学副大臣、参議院議員。1964年生まれ。東京大学法学部卒業後、86年通産省入省。2001年参議院議員初当選(東京都)。民主党政権では文部科学副大臣を2期務めるなど、教育、医療、スポーツ・文化を中心に活動。党憲法調査会事務局長、参議院憲法審査会幹事などを歴任。13年7月の参院選で落選。同年11月、民主党離党。14年から国立・私立大の正規教員を兼任するクロス・アポイントメント第1号として東京大学、慶応義塾大学の教授に就任。同年、日本サッカー協会理事。15年2月から文部科学大臣補佐官として大学入試改革などを担当している。


鈴木寛「混沌社会を生き抜くためのインテリジェンス」

インテリジェンスとは「国家安全保障にとって重要な、ある種のインフォメーションから、要求、収集、分析というプロセスを経て生産され、政策決定者に提供されるプロダクト」と定義されています。いまの日本社会を漫然と過ごしていると、マスメディアから流される情報の濁流に流されていってしまいます。本連載では既存のマスメディアが流す論点とは違う、鈴木寛氏独自の視点で考察された情報をお届けします。

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