人気エコノミストの中原圭介氏が新刊『石油とマネーの新・世界覇権図』を上梓した。同書では国際情勢を見る上で、注目すべきは中東のイランだという。ギリシャの財政問題や中国の人民元切り下げなど、さまざまなトピックスがある中で、なぜイランなのか、その理由を聞いた。

――世界情勢を見ていく上で、なぜいま中東のイランに注目するのですか?

『石油とマネーの新・世界覇権図』著者の中原圭介氏

中原 中東には多くの対立軸が存在しています。アメリカとイランの対立もその1つですが、ほかにもイスラエルとパレスチナ(ハマス)、サウジアラビアとイラン、イスラエルとイランなどが、互いに反目しあう状態を続けています。

 対立の構図が複雑に絡み合う中東情勢を、一気にすべて解決に導くのは不可能でしょう。しかしアメリカとイランの和解が本当に進むならば、中東情勢に劇的な変化をもたらす可能性があるだろうと、私は考えています。なぜなら、あまたの対立軸がある中東の中で、その中心にいるのが常にイランだからです。

 そのきっかけは、今年の7月、イランが核開発を巡って6ヵ国(アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国、ドイツ)と最終合意を迎えたことです。イランの核開発に対して多くの経済制裁等がなされてきたのが、これから徐々に解除されていくことになりそうです。

 それによって何が起こるのかというと、将来的にイランの原油と天然ガスの供給が増えていくようになります。これまで経済制裁によって、原油や天然ガスの生産や輸出が思うようにできなかったわけですが、それが解除されることで、イランのエネルギー資源の産出量がこれから着実に増えていくでしょう。

――イランの天然ガスや原油の増産というのは、そんなに大きなインパクトなのでしょうか。

中原 イランの国際市場への復帰は、中東産油国における力関係を大きく変えることになるでしょう。なぜなら、エネルギー全体で見れば、イランはサウジアラビアやロシアと並ぶ資源大国であるからです。

 イランへの経済制裁が2015年末にも解除されれば、原油確認埋蔵量が世界4位の同国には、石油メジャーをはじめ海外のエネルギー企業からの投資が活発化していくでしょう。生産設備が新しくなり、採掘技術も向上していくでしょう。