混乱を深める中国・天津港での爆発事故。これが国内外に与えた影響と波紋は計り知れない。鈍化する中国経済への追い打ちともなり、国際社会は「中国は危ない」とますます疑念を深めている。
中国の現場から上がるのは「いまどきこんなことをやっているのか」という驚きの声だ。中国の危険物倉庫の実態から、今回の爆発事故に見る危うさを再検証する。
権力者が後ろ盾なら
安全基準も無視できる?
天津港といえば1860年に開港した古い港だが、今では世界4位の貨物取扱量を誇る先進的な国際港に発展した。しかし「先進的な国際港」というのは名ばかりで、この事故で露呈したのは、「ずさんな管理」という失態だった。
今回、事故を起こしたのは天津瑞海国際物流有限公司(以下、天津瑞海)。石油化学を中心に発展する天津をバックに、近年、危険物を扱う大型倉庫として頭角を現した一社だ。
同社は危険物コンテナ取扱業務の大型物流基地として、数年間で急速な成長を遂げた民間企業である。設立は2012年とまだ若い企業だが、昨年の拡張工事を経て、年間の危険物理扱量を5万トンにまで拡大させた。
設立から3年目の今年、天津瑞海は大惨事を引き起こす。その会社経営の実態を検証すれば、「不透明な会社設立」や「条例の無視」など、数々の“爆発の導火線”が浮上する。
中国で危険品取扱業種は許可制であり、民間からの参入はほぼ不可能だが、この会社はなぜか短時間で設立にこぎつけた。しかも、中国では「危険化学品安全管理条例」に基づき、関連当局への書類申請が必要だが、現地報道によれば天津瑞海はこれすら行っていないという。権力者が後ろ盾になっていることは疑う余地もない。
「後ろ盾」が存在するならば、厳しい規定を愚直に順守する必要などどこにもない。こうした企業体質からは「やることなすこと」がずさんであることも容易に想像がつく。