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実録・底上げ人材育成術

成果主義の落とし穴
お金で動く社員はお金で去っていく

山元浩二 [日本人事経営研究室(株)代表取締役]
【第4回】 2015年9月4日
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 前回の記事「“意識低い系”社員を本気にさせる!社長のコミュニケーション術」は、たくさんの方にお読みいただき、嬉しく思います。テーマは社員のモチベーションをどうやって高めるか。その一つとして社長のコミュニケーション術に注目してみました。

 一方で留意したいことがあります。社員のモチベーションを高める方策として、これを賃金制度の観点から「成果主義がやる気と業績をアップさせる」というお考えの経営者、人事担当者の方も多いと思います。しかし、18年、中小企業の現場を見てきた私の結論は、これは間違いです。そのように申し上げると、驚かれる方も多いでしょう。

 成果主義とは何でしょうか?一言で言えば「頑張った分だけ報われる」ということです。営業担当者であれば、営業成績等に応じて評価した結果を、給与や賞与に結びつけますので一見すると合理的に思えます。しかし、中小企業だからこその「落とし穴」が潜んでいることは意外に知られていません。

お金で動く社員はお金で去っていく
“人参”をぶらさげるだけは逆効果

 5年ほど前のことです。

 「山元さん、営業成績ナンバーワンの社員にまた辞められてしまった。どうしましょう」

 ある中小企業の社長さんがSOSで当社に駆け込んできました。聞けば他社のコンサルタントの指導の下で、ギチギチの成果主義を反映した人事評価制度を導入して、一時的に売り上げが好転したものの、社内のトップセールスマンが辞めてしまったというのです。野球で言えば、「エース」「4番打者」として社内では位置付けられていました。

 この会社は従業員数が20人規模でしたが、その社員が辞めた原因を探ると、どうやら大手の競合に引き抜かれたようでした。当時はリーマンショックの後で、世の中の景気がどん底ムードの頃です。厳しい経営環境にあって会社全体の業績が伸び悩んでいた中でも、彼は頑張っていたわけですが、ある日、突然自分の会社に見切りをつけたのです。成果主義を取り入れて逆効果になった典型的な事例です。

 私が長年、中小企業の人事評価制度に関わって確信したのは、「お金で動く社員は、お金で会社を去っていく」ということです。景気が回復した昨今は、失業率が若干3%台に下がる“完全雇用”のご時世ですから、中小企業は大手との人材獲得競争に遅れを取りがちです。「人参をぶら下げれば社員が目の色を変えて働くぞ」と経営者が口にする(実話です)ようでは、ますますお金で動く人が出てきかねません。

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山元浩二 [日本人事経営研究室(株)代表取締役]

1966年、福岡県飯塚市生まれ。日本で随一の人事評価制度運用支援コンサルタント。日本社会を疲弊させた成果主義、結果主義的な人事制度に異論を唱え、10年間を費やし、1000社以上の人事制度を研究。会社のビジョンを実現する人材育成を可能にした「ビジョン実現型人事評価制度®」を日本で初めて開発、独自の運用理論を確立した。 導入先では社員の評価納得度が9割を超えるなど、経営者と社員双方の満足度が極めて高いコンサルティングを実現。その圧倒的な運用実績を頼りに、人材育成 や組織づくりに失敗した企業からオファーが殺到するようになる。地元福岡で2001年に創業、2013年には東京に本社を移転し、全国的にもめずらしい人事評価制度専門コンサルタントとしてオンリーワンの地位を築く。業界平均3倍超の生産性を誇る自社組織は、創業以来、増収を果たす。2013年11月『小さな会社はリーダーを人事評価制度で育てなさい!』を発刊。代表著書に累計20刷のロングセラーを誇る『小さな会社は人事評価制度で人を育てなさい!』(KADOKAWA/中経出版)などがある。日本人事経営研究室(株)HPはこちら


実録・底上げ人材育成術

日本企業の99%は中小企業で、従業員の7割は中小企業で働くビジネスマン。実は中小企業こそ日本経済の「マジョリティー」なのである。そんな中で人材マネジメントについて注目してみると、大企業オリジンの手法が中心で、必ずしも現状にマッチしていない。たとえば近年アメリカ型のマネジメントから派生した成果主義に対する考え方、「360度評価」等の新しい手法は、社員数が3ケタにも行かない中小企業では通用しないことが多いというのが、独立前を含め18年、300数十社の中小企業を見てきた筆者の持論だ。本連載では、ビジネススクールや経営コンサルタントが言いがちな「定説」を覆し、山元氏の豊富な経験と取り組み事例を元に独自の視点で中小企業の人材育成を語る。

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