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黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史

昇進リストは社長や専務の「女」ばかり!
“言いなり人事部長”の深い苦悩

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第29回】 2015年8月25日
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社長の鶴の一声で、何の経験もない人をその部署の管理職に据えることもしばしばあった。中には社長や専務の「愛人」と噂される女性たちも。その都度、人事部員は関係部署の管理職などにお詫びをすることに

 社内において人事権を握った者は強い。採用、配属、評価、異動、リストラなど、あらゆる面から社員や組織をコントロールすることができる。こうした中でメディアが報道で取り上げる人事と言えば、リストラや労使紛争、成果主義などお決まりのものが多い。

 しかし実際は、多くの会社員が一喜一憂するのは人事の処遇や待遇であり、その権限を握る者への迎合であり、失望や諦めである。これらのホンネのところが、もっと公にされるべきなのではないだろうか。

 今回は、高齢となりながらもやりたい放題の社長と、その威を借る専務のコンビを紹介したい。この2人による「長期政権」に不満や憤りを持ち、退職した管理職や役員らの話をもとに、腐敗し切った人事の実情を炙り出したい。


 「なんだ、この人事リストは!?」
長期政権で人事を仕切る老害社長

 また始まった。丸い背中をさらに丸めて、社長が言い始める――。

 「あいつは、どうなったんだ?このリストにないということは、今回の人事異動の対象にはならないのか?それじぁ、この前の話とは違うだろう……」

 社長は、70代半ばが見えつつある。就任18年を超える「長期政権」を敷いている。社内にライバルはいない。この十数年で、同世代のほとんどが退職したり、辞めるように仕向けられた。社内労組はあるものの、春闘以外、何ら機能していない。

 その横に専務の白石(59歳)が座る。この男が「長期政権」を支える曲者なのだが、特に女性社員は彼の実態に気づいていない。女性の前では態度が豹変し、ナイスミドルを気取るからだ。

 この専務は、小さな頃から家庭で極度に甘やかされてきたと、社内では噂される。自分が周囲から悪く思われることを徹底して嫌う。会社では、常に「いい人」と思われるように日々、画策する。白石はしばらく黙っていた後、早速社長の側に回った発言を人事総務部長に対して行なう。

 「部長は、人事異動リストを早くつくり直したほうがいい」

 社長と専務のコンビの前に、人事総務部長の森(49歳)は引き下がるしかない。心の中では、こう言いたかった。

 「ふざけるな!1週間前にお前が『このリストでいい。役員会で、社長の了解をとる』と言い切ったじゃないか。社長がノーと言えば、それを説得するのがナンバー2であるお前の仕事だろう?」

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史

 ここ10数年の間に社会環境が大きく変わり、人々のホンネとタテマエに対する価値観が揺らぎ始めている。それを具現化しているのが、今の企業の職場ではないだろうか。これまでは、ホンネとタテマエが絶妙にバランスしながら、人間関係が維持されてきた。しかし、企業社会において生き残り競争が激化し、「他人より自分」と考えるビジネスパーソンが増えるにつれ、タテマエを駆使して周囲を蹴落とそうとする社員が増えている。

 誰もが周囲を慮らなくなり、悪質なタテマエに満ち溢れた職場の行きつく先は、まさしく人外魔境。そこで働く社員たちは、原因不明の閉塞感や違和感、やるせなさに苛まれながら、迷える仔羊さながらに、次第に身心を蝕まれて行く。この連載では、そうした職場を「黒い職場」と位置づけ、筆者がここ数年間にわたって数々のビジネスパーソンを取材し、知り得たエピソードを基に教訓を問いかけたい。

「黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史」

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