すったもんだの内紛の末に、郵政改革の骨格が固まりました。ほぼ当初の亀井案どおりで落ち着きましたが、その問題点は既に先週説明したので、今週は郵政を題材に、民主党の“経済音痴度”の度合いを考えてみたいと思います。

ゆうちょ銀行を巡る意味不明の対応

  郵政改革について問題点はたくさんあるのですが、その中でも私が一番理解できないのは、なぜゆうちょ銀行を「銀行法が適用される普通の会社」のままにしたのかということです。

 郵貯の収益で郵便局や郵便配達のネットワークを維持するというのは、政策的には明らかに間違っていますが、政治的にその道を選択した以上、国民負担を抑えるためには、ゆうちょ銀行が安定的に大きな収益をあげられなくてはなりません。

 もちろん、そのために預入限度額を引き上げて、民業圧迫お構いなしに大量の資金を集めようとしているのですが、融資能力がないゆうちょ銀行にとっては、国債が主な運用先とならざるを得ません。

 その場合、ゆうちょ銀行は二つのリスクを抱え込むことになります。一つはフローの面でのリスクです。国債金利と預金金利の間には金利差がありますので、特に現在のように預金金利が異常なまでに低い場合、預金量が増えれば増えるほど収益が大きくなりますが、金融市場が財政赤字を嫌気して金利が上昇を始めたら、その収益も減少する可能性があります。

 それよりも怖いのは、もう一つのストック面でのリスクです。ゆうちょ銀行は膨大な額の国債を保有していますが、その中で時価評価されているのは満期が近いごく一部だけであり、残りは簿価で評価されています。

 しかし、万が一国際会計基準が適用されてすべての国債を時価評価せざるを得なくなったら、金利上昇局面では国債価格が低下しますので、ストック面で大きな損失が発生するかもしれないのです。このストック面での“制度リスク”は、銀行法が適用される限りは逃れられません。