長寿の食卓~あの人は何を食べてきたか~ 樋口直哉
【第18回】 2015年9月10日 樋口直哉 [小説家・料理人]

長寿の秘訣は週2のゴルフと毎昼のチキンラーメン

イラスト/びごーじょうじ

 ニューヨークを中心に展開する「momofuku」というレストラングループがある。ヌードルバーとして人気を博し、オーストラリアやカナダにも進出している人気店だ。韓国系の米国人シェフ、デビッド・チャンは店名の由来をこう語る。

「安藤百福へのオマージュだ」

 世界で最も名前が知られている日本人の一人、安藤百福。その人生は波瀾万丈だ。台湾で生まれ、戦前は繊維産業で、戦後は塩の製造で財を成す。しかし、製塩所の若者に渡していた小遣いの源泉徴収を怠ったと脱税容疑で収監。裁判の結果、無罪釈放となったのは2年後のことだった。その後の安藤は請われて信用組合の理事長に就任する。発明のきっかけを得たのはこの頃だ。

 昭和20年代の日本は深刻な食料不足に悩まされていた。GHQは当時米国の余剰作物であった小麦を日本に援助し、多くは給食などでパンに加工されていた。自伝によれば「東洋には麺文化がある。麺なら栄養もあるだろう」と厚生省(当時)に提案するが「量産技術がない」と却下されてしまう。

 苦闘は続く。10年後、その信用組合が資金繰りに行き詰まり倒産。負債を返すために安藤は無一文になる。残ったのは住んでいた家だけ。そうした状況で取り組んだのがインスタントラーメンの研究だった。

この連載記事のバックナンバー
トップページへ戻る

樋口直哉 [小説家・料理人]

1981年生まれ。服部栄養専門学校卒。料理人として活動する傍ら、2005年、『さよならアメリカ』で群像新人文学賞を受賞し、小説家としてデビュー。ほかの作品に『月とアルマジロ』(講談社)、『大人ドロップ』(小学館)、『星空の下のひなた。』(光文社)、『ヒマワリのキス』(徳間書店)、『アクアノートとクラゲの涙』(メディアファクトリー)がある。

 


長寿の食卓~あの人は何を食べてきたか~ 樋口直哉

1日でも長く生きたい――。きっと多くの人が望むことだろう。では、実際に長生きをした人たちは何を食べてきたのか。それを知ることは、私たちが長く健康に生きるためのヒントになるはずだ。この連載では、歴史に名を残す長寿の人々の食事を紹介。「長寿の食卓」から、長寿の秘訣を探る。

「長寿の食卓~あの人は何を食べてきたか~ 樋口直哉」

⇒バックナンバー一覧