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黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史

28歳美人デザイナーがもがく
「中小企業リストラ」の狡猾な罠

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第32回】 2015年9月15日
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未経験でデザイン事務所に入社した28歳の女性は仕事らしい仕事もさせてもらえず、1年でいきなり解雇通告を受けた

 今回は、入社してからわずか1年で会社を辞めさせられた28歳の女性を紹介しよう。彼女は、筆者が出入りする出版社から仕事を請け負うデザイン事務所に勤務していた。職人の集団ではあるが、この女性は未経験であり、素人に近い。

 当然、社長の了解で入社したはずなのだが、労働契約書すら交わされなかった。1年経つと、「辞めろ!」と責められた。その背後にひしめくものは、社長と出版社の部長との間で繰り広げられる、醜いエゴだった。

 あなたの職場に、組織のタテマエに振り回され、会社員生活を台無しにさせられた、この女性のような人はいないだろうか。


昨日社長から突然、
年末で辞めるように言われて……

 昨年11月のこと――。

 「突然のことで、私も驚いているんです……」

 白川有美の顔色は、青冷めていた。ふだんから色が白いが、今日は血管が見えるほどに頬や額が青白い。全身から倦怠感を漂わせる。いつもの容姿端麗な姿とは、別人のようだ。

 ここは、中堅出版社(社員数200人)の1階ロビー。入口から向かって右側に受付があり、その数メートル奥に茶色いソファがある。深々と座れるはずなのだが、白川は腰をかすかに降ろしただけで、やや前のめりになり、話す。声は少し震えている。

 「昨日、社長から『年末で辞めるように』言われて……。いきなりそんなことを言われても、これからどうしていいのか……」

 白川は、デザイン事務所に勤務する28歳の女性だ。1年前に入社し、ウェブや雑誌などのデザインをつくる4人デザイナーたちの指示を受けて、資料を集めたり、クライアントに連絡をしたりするアシスタントである。この出版社も、クライアントの1つだ。白川は“退職の挨拶”をするために現れた。わずか1年だったが、白川の窓口となったのが、雑誌編集部の川本(29)だった。

 「辞めろ、なんて……。私たちの前では、若井さんは紳士だけどね……」

 同情するふりをしつつ、横に座る、同じ部署の内田の顔を見る。内田(30)は、「元気でね……」とだけ声をかける。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史

 ここ10数年の間に社会環境が大きく変わり、人々のホンネとタテマエに対する価値観が揺らぎ始めている。それを具現化しているのが、今の企業の職場ではないだろうか。これまでは、ホンネとタテマエが絶妙にバランスしながら、人間関係が維持されてきた。しかし、企業社会において生き残り競争が激化し、「他人より自分」と考えるビジネスパーソンが増えるにつれ、タテマエを駆使して周囲を蹴落とそうとする社員が増えている。

 誰もが周囲を慮らなくなり、悪質なタテマエに満ち溢れた職場の行きつく先は、まさしく人外魔境。そこで働く社員たちは、原因不明の閉塞感や違和感、やるせなさに苛まれながら、迷える仔羊さながらに、次第に身心を蝕まれて行く。この連載では、そうした職場を「黒い職場」と位置づけ、筆者がここ数年間にわたって数々のビジネスパーソンを取材し、知り得たエピソードを基に教訓を問いかけたい。

「黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史」

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