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宿輪ゼミLIVE 経済・金融の「どうして」を博士がとことん解説

量的緩和の解消に利上げの追い打ちで
米国株価半減のリスク

宿輪純一 [経済学博士・エコノミスト]
【第19回】 2015年9月16日
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 FOMC (Federal Open Market Committee:連邦公開市場委員会)は、日本銀行の金融政策決定会合に当たるもので、米国の金融政策を協議・決定する会議です。特に今回のFOMCは世界中の注目を集めています。すでに米国は量的金融緩和を昨年の11月に止めており、いよいよ利上げの可能性があるからです。

 本稿がリリースされるのは16日の水曜日ですが、FOMCがその16日~17日、水曜日~木曜日に開催されます。FOMCの開催は通常は火曜日~水曜日であり、今回の対応は極めて異例です。金融政策決定に影響の大きい米国の消費者物価指数(CPI)が発表されるのが16日であることもこの日程になった一因でしょう。つまり、金融政策にとって重要な消費者物価指数を確認した上で議論をしたかったのでしょう。

FOMC委員10名中4名は利上げ容認派

 実は、国によって中央銀行の制度は結構違うのですが、FOMCはその投票方法(投票権)が特殊です。

 まず、議長と副議長、そして理事5名に投票権があります。現在、理事は2名が空席のため3名が投票します。米国の連邦準備銀行(以下連銀)は米国各地に12ありますが、このうち、まずニューヨークの理事は常に投票権があります。残りの11を4つの地域に分けて、その4地区の代表1人が毎年輪番で投票権が与えられるのです。

 また、米国の連銀の役員は、他の先進国の中央銀行の役員もそうですが、全員経済学博士号を持っている経済学者です(日本銀行の場合は金融政策決定会合参加者9人中、経済学博士保有者は2名のみ)。そのため連銀の役員は自分の経済政策に対する分析力と判断に対するしっかりした考え方を持っており、その考え方を明らかにしていることが多いのです。インフレに対して厳しい見方をする役員をタカ派、インフレに対して甘い見方をする役員をハト派と呼んでいます。

 今回の投票権をもった委員の顔ぶれを見ると、イエレン議長・フィッシャー副議長、ブレイナード理事・パウエル理事・タルーロ理事、ダドリー/ニューヨーク連銀総裁・ラッカー/リッチモンド連銀総裁・ロックハート/アトランタ連銀総裁・エバンス/シカゴ連銀総裁・ウィリアムズ/サンフランシスコ連銀総裁の10名となっています。このうちパウエル理事・ラッカー総裁・ロックハート総裁・ウィリアム総裁の4名がタカ派です。スタート地点で10人中4名が利上げ方向の姿勢を持っています。つまり、世の中の感覚よりも利上げに向かう可能性が高いのです。

 もちろん、この10名以外の連銀総裁のコメントが新聞等で取り上げられることもがあります。しかし、彼らの発言は意味がないとは言いませんが、彼らは決定には参加できないので、反応する必要はありません。

 米国の連銀は、それまでの量的金融緩和政策がその副作用で経済を悪化させる異常な状態として、早期の“正常化”を望んでいます。その考え方や方向は揺るがないものがあります。

 今回の中国株急落による世界株式市場の乱高下前ですが、筆者がFRB(連邦準備制度理事会)の会議にゲストで参加したときに「今後の通貨量は2020年までに2兆ドルまで落とす」という計画を明らかにしていました。

各国は量的緩和のリスクを回避できるか?

 この7年間の米国株の上昇は、もちろん好調な米国経済の影響によるものでもありますが、なんといってもその主因は、7年間に渡る「量的金融緩和」です。そのため、昨年11月に量的緩和を止めてからは、米国株価の頭は重いのです。

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宿輪純一[経済学博士・エコノミスト]

しゅくわ・じゅんいち
 博士(経済学)・エコノミスト。帝京大学経済学部経済学科教授。慶應義塾大学経済学部非常勤講師(国際金融論)も兼務。1963年、東京生まれ。麻布高校・慶應義塾大学経済学部卒業後、87年富士銀行(新橋支店)に入行。国際資金為替部、海外勤務等。98年三和銀行に移籍。企画部等勤務。2002年合併でUFJ銀行・UFJホールディングス。経営企画部、国際企画部等勤務、06年合併で三菱東京UFJ銀行。企画部経済調査室等勤務、15年3月退職。4月より現職。兼務で03年から東京大学大学院、早稲田大学、清華大学大学院(北京)等で教鞭。財務省・金融庁・経済産業省・外務省等の経済・金融関係委員会にも参加。06年よりボランティアによる公開講義「宿輪ゼミ」を主催し、4月で10周年、開催は200回を超え、会員は“1万人”を超えた。映画評論家としても活躍中。主な著書には、日本経済新聞社から(新刊)『通貨経済学入門(第2版)』〈15年2月刊〉、『アジア金融システムの経済学』など、東洋経済新報社から『決済インフラ入門』〈15年12月刊〉、『金融が支える日本経済』(共著)〈15年6月刊〉、『円安vs.円高―どちらの道を選択すべきか(第2版)』(共著)、『ローマの休日とユーロの謎―シネマ経済学入門』、『決済システムのすべて(第3版)』(共著)、『証券決済システムのすべて(第2版)』(共著)など がある。
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「円安は日本にとってよいことなんでしょうか?」「日本の財政再建はどうして進まないのでしょうか」。社会人から学生、主婦まで1万人以上のメンバーを持つ「宿輪ゼミ」では、経済・金融の素朴な質問に。宿輪純一先生が、やさしく、ていねいに、その本質を事例をまじえながら講義しています。この連載は、宿輪ゼミのエッセンスを再現し、世界経済の動きや日本経済の課題に関わる一番ホットなトピックをわかりやすく解説します。

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