闇株新聞[2016年]
2015年9月22日公開(2015年10月21日更新)
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正体は明かしていない。
人気ブログ「闇株新聞」で「オリンパス事件」「AIJ投資顧問事件」といった経 済事件をきっかけに、信頼のおける解説でコアな読者をつかんでいる。 ダイヤモンド・プレミアム・メールマガジン(DPM)で有料メルマガ『闇株新聞プレミアム』を配信。
著書に『闇株新聞 the book』(ダイヤモンド社)など。

闇株新聞[2016年]

闇株新聞編集部
 

『闇株新聞』は、新聞、雑誌などの大メディアの経済記者や金融業界関係者、プロ級の個人投資家がひそかに情報源にしている。連載『週刊闇株新聞』では、ダイヤモンド社グループの有料メルマガ・DPM(ダイヤモンド・プレミアム・メールマガジン)『闇株新聞プレミアム』で配信しているディープな闇株的考察のダイジェストや「闇から暴く相場の真実」というスタンスのもと株、為替、日本国債、世界経済の今後などについて解説していきます。

闇株新聞編集部

ライブドアとどこが違う? 東芝の「不適切会計」
粉飾決算がなぜ「不適切会計」になったのか?
『闇株新聞』は東芝の闇をどう伝えてきたか

日本株や為替、世界経済に潜む闇を白日の下にさらけ出し、独特な視点で切り込む刺激的な金融メルマガの闇株新聞プレミアム。その分析力は、大新聞の経済記者がネタ元にしたり、プロの金融マンたちも愛読していることで実証済み。この連載では、闇株新聞プレミアムの一部を抜粋し、加筆修正してお届けけします。今回は、東芝の不適切会計問題について。

 東芝はさる9月7日、遅れていた2015年3月期連結決算をようやく発表するとともに、2009年3月期以降の決算をすべて修正しました。

 これを受けて東証は、15日付で東芝(6502)を特設注意市場銘柄に指定。不正会計が長年にわたって継続され株主・投資家の信頼を損なったとして上場違約金9120万円を徴収すると発表しました。

 名証も同日、特設注意市場銘柄の指定と上場違約金1740万円を求めることを発表しています。足掛け6年1562億円にも及ぶ粉飾決算は、逮捕者はなく上場も維持されたまま計1億860万円の違約金で「終結」したことになります。

問題発覚当初からこの結末は見えていた!?

  メルマガ『闇株新聞プレミアム』では5月8日に東芝が要領を得ない三本立てのIRを出した直後から、この問題を継続的にお伝えしてきました。

 本紙は独自の情報網と経験から、この手の証券事件(事件化していない「問題」も含め)を取り扱い、過去には「ライブドア事件」「オリンパス事件」「日興コーディアル事件」など、多くの闇に光を当ててきました。

 結果的には、この東芝の三本立てのIRにより、「第三者委員会の調査報告書とは穏便で玉虫色で重要なことは何も明らかにされない」「その調査報告書が出されるのを待って過年度の決算修正と2015年3月期の決算短信・有価証券報告書提出が粛々と行われ、もちろん上場も維持されて事件化することなど絶対になく」終結するだろうとの予想が、ほぼその通りになりました。

ライブドア事件、日興コーディアル事件とはなにが違うのか?

 というのも、この手の経済事件は事件化するのかどうかも含めて、明らかになったときにはシナリオと結論(落としどころ)が決まっているものだからです。

 例えば2013年4月15日、第2四半期報告書の提出遅延と過年度決算修正の可能性を開示したインデックスには、第三者調査委員会の調査中の5月に証券取引等監視委員会が強制捜査に乗り込み、6月には民事再生法適用申請、7月に上場廃止、そして9月には中核事業がセガサミーに格安(140億円)で譲渡され、消滅してしまいました。

 2006年1月に事件化したライブドアは53億円の粉飾決算でした。そのうち37億円はライブドア株を連結対象ではない投資子会社に割り当て、その利益でライブドアの決算を黒字化したものでした。まあ「犯罪か?」と言われれば犯罪ですが、それでライブドアは即刻上場廃止となり堀江社長(当時)ら幹部数人が逮捕され、堀江社長は実刑となりました。

 2004年に同じ手法で187億円もの粉飾決算をした日興コーディアルは、ライブドアとは比べ物にならない専門知識を駆使し、社長(当時)が主導した「かなり悪質な会社ぐるみの粉飾決算」だったにもかかわらず、全く事件化しませんでした。この時も東京証券取引所は早々に「会社ぐるみではなく悪質性はない」との奇怪なコメントとともに上場維持を決め、証券取引等監視委員会は日興コーディアルが発行していた社債500億円の1%に相当する5億円の課徴金を課しただけでした。

 東芝の場合、日本有数の原発メーカーであること、2014年12月末時点で長短合わせて1兆9000億円以上の外部負債(主に銀行借り入れであり、焦げ付いたら大事になる)があること、歴代の経団連会長や日本郵政の西室社長などを輩出している“名門”であることなどから、周囲が大事件に発展しないよう配慮していました。

 それは「粉飾決算」でも「所得隠し」でもなく「不適切会計」などという極めてあいまいな表現に終始したことからも明らかでした。

派閥抗争のタレ込み合戦で想定外の展開に!?

 しかし、当初のシナリオとは違って"こじれた"ところもありました。そもそも今回の件が明るみになったのは、西田相談役(家電・PC事業出身、2005年~2009年に社長)と佐々木副会長(社会インフラ・原子力出身、2009年~2013年に社長)の確執があり、西田相談役が佐々木副会長の追い落としを狙って画策したものといわれています。

 6月25日に開催された定時株主総会(取締役選任だけ承認された)の席上、田中社長は2月中旬に証券取引等監視委員会から金融商品取引法に基づく報告命令があり「インフラ関連事業の会計処理について開示検査を受けた」と言っていたのです。

 つまり当初は佐々木副会長の息のかかった社会インフラ事業にだけ「不適切会計」が存在するとされていたのです(そうタレ込みだからです)。

 そして4月3日には室町会長(この人には社長経験がありません)を委員長に社内メンバーを中心とした特別調査委員会を立ち上げたのですが、その日のIRにはわざわざ「企業不祥事における第三者委員会ガイドラインにもとづく第三者委員会の形態は取らない」と大見栄を切っていました。

 あたかも「ちょいと邪魔なグループを追い出すだけなので安心して社内の特別調査委員会に任せておけ」といったノリです。

 それが「不適切会計が東芝のほぼ全部の社内カンパニーに及ぶ」とか「不適切会計の合計が1500億円をこえる」などの報道が出てきて、IRで慌てて否定のリリースを出すなどしています。

 要するに佐々木派がマスコミに情報をリークして「タレ込み合戦」になったのです。これを受けて東芝は特別に延期承認されていた2015年3月期決算発表と有価証券報告書を再延期する羽目になります。

 ちなみにこの再延期は、どの機関に申請して承認されたかがはっきりしません。8月31日の17時23分に「どこかはっきりわからない機関」に申請したとのIRが出て、同日18時32分にその「どこかはっきりわからない機関」から再延長を承認されて東証上場が維持されたことになります。

海外メディアを巻き込んでいれば刑事事件になっていた

 話を戻すと、再延期する羽目になった背景には、新たなタレ込みが多数寄せられたことで、いい加減な監査を続けると完全に処分対象になると保身に走る新日本監査法人が妥協せず、時間切れになってしまったようです。

 そのような気配を察してか日本経済新聞社の論調も微妙に変化して、日経ビジネスが8月31日発売号で「東芝 腐食の原点」なる記事を書いています。東芝社内からの声を丹念に拾った記事ですが、内容はもとより「記事にできた背景」が非常に興味深いものでした。

 関係各所の「火の粉を避けよう」という動きが相次いで、いつのまにか穏便に済ませようという当初の大方針が変わったケースも過去には結構あったからです。

 例えば、旧UFJ銀行は社内抗争からタレこみ合戦となり、三菱銀行に吸収されて「消滅」してしまいました。古い話ですが野村證券の酒巻社長(当時)らが1997年に逮捕されたきっかけも、社内からのタレこみでした。

 オリンパス事件も、ウッドフォード社長が抗争の挙句に解任され、腹いせに内部資料を海外メディアにに提供したことが発覚の発端でした。

 今回の東芝の件も、タレ込んだ先が証券取引等監視委員会や日本のメディアではなく、海外メディアであれば「当局も引っ込みがつかなくなって」刑事事件になっていたような気がします。

これから東芝はどうなる!?

 東芝については、決算発表を受けて証券取引等監視委員会が「開示書類の虚偽記載に当たると見なし、行政処分として課徴金を科すよう金融庁に勧告する方針である」と日本経済新聞が報じています(9月7日付け夕刊1面)。

 つまり「不適切決算」ではなく「開示書類の虚偽記載」に該当するが(粉飾決算とも少しニュアンスが違うようです)、刑事事件化することはなく課徴金処分にすると発表しているようなものです。ただ課徴金は史上最大の84億円になるようで、東芝は2015年3月期決算で計上しています。

 これで東芝が刑事事件化する可能性は「ほぼ」なくなりました。「ほぼ」と書いているのは、証券取引等監視委員会とタッグを組む東京地検特捜部が「どうしても事件にする」と主張すればその限りでありませんが、そんな雰囲気でもなさそうです。

 これを受けて東証が、東芝を内部管理体制に問題がある「特設注意市場銘柄」に指定。1年たっても内部管理体制に改善が見られないと上場廃止にできますが、東芝は臨時株主総会で社外取締役を「どっさり」選任し、少なくとも内部管理体制「だけ」は申し分なくなります。

 気になるのは、いろいろな周囲の思惑があったにせよ「トップが主導した組織ぐるみの利益かさ上げだった」と断定してしまったことで、東芝があとあと海外投資家からの損害賠償請求だけでなく、海外事業の推進を大変不利にしてしまったことです。

 とはいえ、東芝問題は当初の思惑とは多少異なり"何事もなかったように"とは行きませんでしたが、表立ってはこれで終結となりそうです。本紙では今後もこの問題を追い続け、動きがあればすぐ皆さんにお伝えしていく予定です。

『闇株新聞プレミアム』ではさらに濃厚な情報を、独自の視点・切り口で解説しています。今、世界で何が起こっているのか、その裏側にはどんな闇が潜んでいるのか――日々のニュースを理解するうえでのセカンドオピニオンとして、活用していただければ幸甚です。

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