大不況によって下落し続けていた住宅価格が、いよいよ「底打ち間近」と言われる。住宅探しに本腰を入れ始めたサラリーマン世帯も多いだろう。不動産市場に精通する石澤卓志・みずほ証券チーフ不動産アナリストは、「本当の底打ちは今年の秋口から」と前置きしつつも、今ここでマイホーム購入を考えている読者のために、最新トレンドを詳しく解説してくれた。年初に石澤氏に行なったインタビューは、家探しに悩む読者から多くの反響を得た。今回は、読者のニーズが特に多かった、千葉、埼玉、神奈川など「東京近郊の住宅動向」にも詳しく触れながら、お届けする。果たして、今家を買うなら都内がよいのか、それとも東京近郊がよいのだろうか?(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也、撮影/宇佐見利明)

いしざわ・たかし/みずほ証券金融市場グループ金融市場調査部チーフ不動産アナリスト。慶応義塾大学卒業後、1981年日本長期信用銀行に入行。長銀総合研究所主任研究員、第一勧銀総合研究所上席主任研究員を経て、2001年より現職。国土交通省、通産省、経団連などの委員や、国連開発機構技術顧問、上海国際金融学院客員教授などを歴任。精緻な分析に定評がある。

――住宅市場では、ここにきて本格的に「底打ち観測」が強まっている。家探しに乗り出す家族世帯も目に見えて増え始めた。住宅価格は今が本当に「底」なのか?

 市況の本格回復は、今年2~3月のデータにはまだはっきり現れていない。ただ、マンション業者の多くは、このゴールデン・ウィークに少しでも多くのお客をモデルルームに集めようと勝負を賭けている。そのため首都圏には、5月にかけて一段と値ごろ感のある物件が出回る可能性が高い。ここが1つの「買い時」のポイントになるだろう。

 ただし個人的には、住宅価格の本当の底打ちは、割安な物件が都心部全体に広がり始める「今年秋口から」と考えている。それに、底打ちが見え始めたのはあくまでも東京を中心とする首都圏だけ。市況が悪いうえにこれから新規供給物件が増える大阪や名古屋などの地方都市は、回復が遅れる可能性もある。

――直近では、値ごろ感のある物件が随分増えてきたと報道されている。

 確かに首都圏では、以前よりも値ごろ感のある物件が増え、売れ行きが比較的戻ってきた。とはいえ、大不況を経て全体的に住宅の供給量が減っているので、数少ない話題物件については、「モデルルームに行ってみたら結構価格が高止まりしていた」という声が少なくない。