5年待てば600万円得するのに…知らずに即売した人の後悔
相続は誰にでも起こりうること。でも、いざ身内が亡くなると、なにから手をつけていいかわからず、慌ててしまいます。さらに、相続をきっかけに、仲が良かったはずの肉親と争いに発展してしまうことも……。そんなことにならにならないように、『相続のめんどくさいが全部なくなる本』(ダイヤモンド社)の著者で相続の相談実績4000件超の税理士が、身近な人が亡くなった後に訪れる相続のあらゆるゴチャゴチャの解決法を、手取り足取りわかりやすく解説します。
本書は、著者(相続専門税理士)、ライター(相続税担当の元国税専門官)、編集者(相続のド素人)の3者による対話形式なので、スラスラ読めて、どんどん分かる!【親は】子に迷惑をかけたくなければ読んでみてください。【子どもは】親が元気なうちに読んでみてください。本書で紹介する5つのポイントを押さえておけば、相続は10割解決します。
※本稿は、『相続のめんどくさいが全部なくなる本』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。

売るなら今はダメ?
税率が半分になる“待つだけ節税”の正体

税率が下がってから売ったほうがいい
国税 相続不動産は亡くなった被相続人が購入した時点から所有期間を数えるので、普通は5年以上になると思いますが、もし亡くなる直前に購入された不動産を相続したのなら、税率に注意が必要ですね。場合によっては、5年の所有期間が過ぎて税率が下がってから売ったほうがいいかもしれません。
無知 売るタイミングを待つだけで税率が半分になるなら、そうしたほうがいいですね。
相続空き家特例で最大3000万円控除
国税 次にお聞きしたいのが、不動産の売却益(譲渡所得)に使える特例についてです。特例はいくつもありますが、とくに相続不動産を売るときに使い勝手のいいものは何だと思いますか?
前田 売却する不動産が、故人の自宅として使われていたものであれば、「相続空き家特例」はぜひ検討したい特例です。これは譲渡所得から最大3000万円を差し引いてくれるもので、確定申告をするときに特例を使うと譲渡所得が3000万円以内なら無税になります。
税率が20.315%と考えると、最大で600万円ほどの節税効果があるということです。ただし、いくつか要件があるので、これを満たしているか確認しておきましょう。
譲渡所得が0ゼロになったとしても確定申告は必要
●相続空き家特例の対象となる不動産(要件抜粋)
* 相続開始の直前において、被相続人以外に居住をしていた人がいなかった
* 相続のときから売却するまで、事業用、貸付用、居住用に供されていない
* 売却代金が1億円以下
国税 建築年月日と、亡くなった被相続人が1人暮らしをしていたかどうか、売却するまで空き家だったかを確認して、1億円以下で売れば使えるということですね。
前田 細かい要件はほかにもありますが、おおむねそんなところです。とくに注意するのは建築年月日です。いわゆる旧耐震基準で建築された家屋しか適用できないので注意が必要です。また、不動産に関する条件のほかに、売り方に関する要件にも注意してください。
「相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る」という条件があるのですが、この特例は2027年12月31日までの期間限定の措置となっています。今後の法改正により期限が延長される可能性もありますので、最新情報を確認してください。
なお、この特例を使って譲渡所得がゼロになったとしても確定申告は必要です。
相続税を取得費にできる「取得費加算の特例」
国税 ほかにも何か検討すべき特例はありますか?
前田 これは相続税がかかる人限定ですが、「取得費加算の特例」も押さえておきたいです。相続税を納めた人が、相続の開始があった日の翌日から3年10カ月以内に相続不動産を売却した場合に、譲渡所得を計算するときの取得費を増やせます。
簡単にいうと、相続不動産にかかった相続税を、譲渡所得を計算するときの経費にできるということです。相続空き家特例ほど細かい要件はないのですが、やはり確定申告が必要です。
ただし、相続空き家特例との選択になりますので、どちらが有利かを判定する必要があります。一般的には、相続空き家特例のほうが有利になります。
国税 特例を使えるかどうかで税負担がかなり変わるので、チェックしておくべきですね。
相続した家を売るときは? …特例を使うなら期限に注意
※本稿は、『相続のめんどくさいが全部なくなる本』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。