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長時間労働は脳卒中リスク
週41~48時間でも上昇

井手ゆきえ [医学ライター],-週刊ダイヤモンド編集部-
【第262回】

 長時間労働は心血管より脳血管にダメージを与えるらしい。医学誌「ランセット」オンライン版の報告から。

 労働時間と健康との関連を調べた研究は多い。心筋梗塞など冠動脈疾患と労働時間との関連では、週35~40時間労働の発症リスクを1とすると、それ以上で約1.4倍に上昇するといわれている。

 ただし、これらの結果は「社会経済的な地位(SES)が高い職種のほうが、長時間労働が多い」「冠動脈疾患は、SESが低い階層の発症率が高い」という“現実”に即していないとの批判があった。また、冠動脈疾患に比べ、寝たきり要因になり易い脳卒中と労働時間との関連は、はっきりしていない。

 そこで今回、英国の研究チームが欧州、米国、オーストラリア3地域で実施された複数の研究結果を系統的に解析し、労働時間と脳・心血管疾患との関連を調べている。本研究での標準労働時間は35~40時間/週、長時間労働の定義は55時間/週とした。

 総コレステロール値や体格指数、生活習慣などの影響を排除して解析した結果、冠動脈疾患の発症リスクは、標準労働時間に比べ、長時間労働で1.13倍に上昇。一方、脳卒中リスクは1.33倍だった。しかも脳卒中の場合、労働時間41~48時間/週で1.10倍、同49~54時間/週で1.27倍と労働時間の長さに相関してリスクが上昇したのである。

 SESと冠動脈疾患との関連では、限定された結果ではあるが、SESの高い職種では、長時間労働リスクが0.87にとどまった。中間層は1.22、地位が低い職種は2.18だった。

 著者は「長時間労働によるリスクは、冠動脈疾患より脳卒中のほうが大きい」と結論している。

 脳血管疾患と冠動脈疾患。予防法はほぼ同じだが、脳卒中にフォーカスするなら血圧の厳格な管理と適度な水分摂取で血液サラサラを心がけること。塩分過多もご法度だ。日本人の摂取基準は8グラム/日だが本気で疾病予防を考えるなら、世界保健機関推奨の5グラム/日にとどめよう。まぁ、残業しないのが一番なのですが……。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)

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井手ゆきえ [医学ライター]

医学ライター。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会正会員。証券、IT関連の業界紙編集記者を経て、なぜか医学、生命科学分野に魅せられ、ここを安住の地と定める。ナラティブ(物語)とサイエンスの融合をこころざし、2006年よりフリーランス。一般向けにネット媒体、週刊/月刊誌、そのほか医療者向け媒体にて執筆中。生命体の秩序だった静謐さにくらべ人間は埒もないと嘆息しつつ、ひまさえあれば、医学雑誌と時代小説に読み耽っている。

 

週刊ダイヤモンド編集部


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