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長期IT計画に向けた仮説立案手法

内山悟志 [ITR代表取締役/プリンシパル・アナリスト]
【第49回】 2015年10月2日
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本連載の前回では長期的ITロードマップを策定することの重要性とそのプロセスについて述べた。しかし、5年先、10年先の自社の状況やビジネス要件を予測することは容易ではないだろう。今回は、長期的なIT計画を立案する際に用いる仮説立案と課題抽出の手法を紹介する。

将来を予測して仮説を立てる

 長期的なIT計画の策定の流れの最初のプロセスが戦略課題に抽出である。この戦略課題は、将来視点(トップダウン)と現在視点(ボトムアップ)の両面から抽出することが望ましい。

 まず、将来視点の課題抽出について考えてみよう。将来のIT戦略課題は、自社の企業規模、事業構成、地域および組織、人員構成などが、この先どのように変化していくかを予測し、そこからITに求められるビジネス要件を抽出しなければならない。しかし、5年先、10年先の自社の状況やビジネス要件を予測することは容易ではない。経営方針や事業環境は大きく変わっていることも十分考えられる。

 そこで、将来の経営戦略や経営課題に対する発想を促すために、不確実性はある程度許容しつつも、将来を予測してビジネス要件となる仮説を立てる際の方法として、ビジネス仮説立案シートの作成を推奨する(図1)

 ここでは、将来における自社の姿に関する仮説を考える代表的な項目として事業、組織、人材、ワークスタイルなどをあげている。将来において、事業別や地域別の売上比率がどのようになっているだろうか、拠点や人員の配置はどのように変化するか、その時従業員はどのような働き方をしているだろうかといった、IT戦略に影響を及ぼすビジネス環境の変化を仮説として設定するのである。

 項目に関しては、自社において重要と思われるものがあれば随時追加すればよい(海外調達比率、グループ内取引比率、地域別生産額比率、M&A企業数など)。そして、それぞれに対して5年前、現在、5年後、10年後に関する実数や比率を記入するようにしている。

 5年前および現在については、社内の各種資料から収集することができるだろう。5年後や10年後については、誰も正確に予測することはできないであろうが、経営者やCIOが抱くイメージを記入するというので構わない。ビジネス仮説立案シートは、ここから何かを算出するためのものではなく、この後のプロセスとなる課題抽出のアイデア出しの際に、将来に対する認識共有を図るための参考資料となるものである。

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内山悟志 [ITR代表取締役/プリンシパル・アナリスト]

うちやま・さとし/大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年からデータクエスト・ジャパンでIT分野のシニア・アナリストととして国内外の主要ベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立し、代表取締役に就任。現在は大手ユーザー企業のIT戦略立案・実行のアドバイスおよびコンサルティングを提供する。


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