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野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて

安倍内閣“新3本の矢”は
経済政策失敗の目くらましだ

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第31回】 2015年10月1日
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 安倍晋三総理大臣は、新しい3本の矢を放つとした。これは、「金融緩和政策から足を洗う」という政府の政策転換の表明だ。2%のインフレ目標は、政府にとって重荷になっている。

金融緩和政策からの撤退が
明白に表明された

 安倍晋三総理大臣は、9月24日、総裁選出後初めての記者会見を行なった。その中で、「本日からアベノミクスは第2ステージに入る」とし、(1)国内総生産(GDP)600兆円、(2)出生率1.8、(3)介護離職ゼロという新しい3本の矢を放つとした。

 この中に、金融緩和政策や2%のインフレ目標は入っていない。これまでアベノミクスの金看板だった金融政策は、第2ステージでは消えたことになる。

 マクロ政策(金融緩和政策や財政拡大政策)からの撤退は、すでに6月の成長戦略(「日本再興戦略」)の中で、「デフレ脱却を目指して専ら需要不足の解消に重きを置いてきたステージから、人口減少下における供給制約の軛を乗り越えるための腰を据えた対策を講ずる新たな『第二ステージ』に入った」という形で示されていたが、それがより明確な形で表明されたことになる。

転換の理由は、経済政策失敗から
国民の目をそらすこと

 マクロ政策から撤退する理由として、それが失敗したからだとは、もちろん言っていない。安倍総理は、これまでの経済政策の成果に言及し、「(経済情勢は)もはやデフレではないという状態まで来た。デフレ脱却はもう目の前だ」と述べた。

 しかし、次項で述べるように、消費者物価上昇率はマイナスになっている。多分、今年いっぱい程度はこの状態が続くだろう。そして、さまざまな指標が経済の停滞を示している。今回の政策転換の本当の理由は、これまでの経済政策の失敗から国民の目をそらすことだ。

 安倍内閣が政権を取って以来、円安が進行して企業の利益が増加し、それによって株価が上昇した。アベノミクスの支持者は、これが成果だと言うだろう。しかし、円安による企業の利益は、健全なものとは言えない。しかも、円安によって本来期待される輸出増大効果は実現していない。

 したがって、私は株高がアベノミクスの成果を表すことにはならないと思う。株価の上昇は所得分配の悪化をもたらすだけであり、日本経済を回復させるものでも、回復の結果でもない。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて

アメリカが金融緩和を終了し、日欧は金融緩和を進める。こうした逆方向の金融政策が、いつまで続くのだろうか? それは何をもたらすか? その先にある新しい経済秩序はどのようなものか? 円安がさらに進むと、所得分配の歪みはさらに拡大することにならないか? 他方で、日本の産業構造の改革は遅々として進まない。新しい経済秩序を実現するには、何が必要か?

「野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて」

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