利回り重視派が飛びつきがちな
「高利回り物件」の落とし穴
アベノミクスの時代、個人の不動産投資がかなり増えた。しかも、低金利と物件高騰の中、利回り確保に血眼になる「利回り星人」が増えている。前回、自宅投資の利回りの知られざる利回り法則を説明した。それはワンルームマンションなど個人の不動産投資にも適用できるだろうか。今回は売却という出口戦略の際に、「利回り星人」が飛びつきがちな高利回り物件の落とし穴についてお話ししよう。
不動産融資が楽になった金融緩和の下、個人投資家が積極的になったのか、「儲かったお金は、北海道の利回り10%以上の高い物件に投資して増やしています」といった話をたまに聞く。
地方は家賃・賃料が安いので、利回りを高くするには、家賃水準に比べて物件価格が割安の掘り出し物を探せば、利回りは確保できる。利回りとは、物件価格を賃料収入で割ったもので、投資の回収期間を知る目安ではある。利回りが高ければ回収期間が短いわけだが、実際に回収できる期間が30年を割る物件はほとんどないから、こんなことは意味がない。
前回、首都圏のマイホームの表面利回りは、2008年頃までにおおむね4%~5%程度のレンジの中に納まるようになった事実と経過を説明した。利回りの収斂は、割高(利回りが低い)な郊外の物件価格が下がり、割安(利回りが高い)な都心の物件の価格が上がったことを通じて、裁定(アービトラージ)で調整されるメカニズムを解説した。
ただ、私は「住み替え」を提唱しており、表面利回りだけが自宅投資の尺度ではないと述べた。住み替えには、買った物件の売却が必要になる。だから、買ったときの価格と売ったときの価格の差が重要になるわけだ。
では、投資物件ではどうなのだろうか?
賃貸住宅(1棟もの)ビッグデータを持つ弊社は、その投資価値を都道府県別に調べてみた。表面利回りが一番低いのは、東京都で6%程度。一番高いのは北海道で9%となったため、北海道への投資が「お得」と思える。しかし、築後20年の表面利回りは東京が8%程度とあまり下がらないのに対して、北海道では9%から18%程度に大きく下がった。表面利回りが2倍になるということは、価格は半値以下になっていることを示している。
つまり、不動産投資は出口(売却)まで考えると話は違ってくるというわけだ。結果として、売却損益まで入れた総合利回りは、驚くことに47都道府県でどこでもほぼ同じような成績となった。