意識的、無意識的に行われる
制度誤認パターン

 次に挙げる3つの手口は、社員への依存に加え、制度への依存も垣間見えるパターンだ。

手口4 休日出勤命令を突然したにもかかわらず、あらかじめ計画された休日であると糊塗し、休日出勤の割増賃金を支払わなければならない代休扱いにせず、割増賃金を支払う必要のない振替休日扱いにすることを強要する

手口5 「時間外労働・休日労働に関する協定(通称36協定)で認められた残業だからやれ」と、あたかも36協定が残業を強いているように誤解させ、また、協定で認められた残業時間内かどうかが不明瞭なまま残業を強いる

手口6 「裁量労働対象者なので、残業や休日出勤手当を支払わない」と、あたかも裁量労働制が深夜残業や休日出勤手当さえも支払わなくてもよい制度だと誤認している

 マネジャーや人事部から、「この休日出勤のかわりに、必ず代わりの休日をとってください。代わりの休日は、(「代休」ではなく)「振替休日」で取り扱ってください」という連絡を受けた方も多いのではないだろうか。「代休」と「振替休日」と聞いて、「?」と思った方は、この手口4にひっかかっている可能性がある。

「振替休日」とは、文字通り、休日出勤した休日を、そのまま別の平日に振り替えて、休日と平日を単に入れ替えたと見なすことで、代わりの休日を取得する。ここで手続きは完了し、休日出勤の割増賃金は発生しない。あらかじめ計画された休日のイベントや対応などの場合に、適用されることが通例である。

 一方の「代休」は、休日出勤した法定休日のかわりに、別の平日に休日を取得することに加えて、時間単位給与の35%の割増賃金を支払うものだ。突然の休日出勤が必要となる場合などに適用される。

 この「代休」と「振替休日」の分かりにくさゆえに、休日出勤の割増賃金が発生しない「振替休日」としての取り扱いを強要するケースが後をたたない。その差異を理解していながら、分かりにくさを悪用して、社員へ「振替休日」扱いとすることを強いるケースは悪質だ。

 手口5は36協定などを、手口6は裁量労働協定を盾にとって強要するケースだ。裁量労働対象者といえども、一般には、深夜残業手当、休日労働手当の対象となる。制度誤認の背景には、制度依存の姿が見え隠れする。制度依存によりマネジメント不在となるケースである。