改造人事の本当の目玉は
自民党税調会長の交代

消費再増税と軽減税率の是非については、さまざまな政治的思惑が渦巻く

 先の内閣改造は、加藤勝信・一億総活躍担当大臣が目玉になったが、その略称を「1億相」とするかどうかなど、政策面以外で話題になってしまった。筆者は、元財務官僚であった加藤氏を知っているが、誠実な人柄でスタンドプレーをしない人なので、じっくりと政策をできる大臣を担当すれば良かったと思っている。

 実は先の人事の本当の目玉は、自民党税制調査会長であった。内閣改造から1週間後の10月14日、自民党の税調会長に宮沢洋一・前経産相の起用が決まり、野田毅氏は事実上更迭された。

 野田氏は、その直前に秘書が覚醒剤使用疑いで逮捕された。それが報道されたのが、内閣改造があった7日。しかし、逮捕は10月1日。さらに、その前日の9月30日に野田氏の秘書が退職している。

 この一連の動きを見て、多少政治をかじった人ならピンとこないはずはない。まったく確証はなく、筆者の邪推にすぎないが、秘書の覚醒剤使用疑いに野田氏側がいち早く気づき、秘書を予め退職させ、その後逮捕。この間の動きを官邸は正確に把握した上で、内閣改造人事を行い、その一週間後に税調人事を行ったと読める。

 野田氏の身動きが取れないのを見越して、安倍首相は「聖域」といわれた税調の人事に手を入れたとされている。もちろん、政策面では、欧州型の軽減税率について野田氏は慎重派とされ、導入したい公明と対立していたので、公明との協議を進めるためだ。つまり、来年の参院選を見据えたものだ。その参院選の公約には2017年4月からの10%への消費再増税の是非が書かれるはずなので、これが消費再増税の帰趨を握るといってもよい。

 後任の宮沢氏はどのような人物なのか。安倍政権、財務省、与党の思惑はどうなのか。軽減税率の落とし所や、消費再増税の行方が気になるところだ。