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森信茂樹の目覚めよ!納税者

公私混同して軽減税率にこだわる新聞は、
財政再建を語る資格なし

森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]
【第100回】 2015年10月2日
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軽減税率にこだわる新聞社の主張の背景には、どんな本音があるのだろうか

 消費税率10%増税時における低所得者対策がもめている。税制改革法7条には、「低所得者に配慮する観点から、給付付き税額控除か軽減税率を検討する。その間は簡素な給付措置を実施する」と記されている。これは「法律事項」である。

 一方、昨年末の税制改正大綱には、消費税の軽減税率制度について、「関係事業者を含む国民の理解を得た上で、税率10%時に導入する。平成29年度からの導入を目指して、対象品目、区分経理、安定財源等について、早急に具体的な検討を進める」と記されている。これは「与党の合意」なので極めて重い意味を持つが、法律となっているわけではない。

 このような中、前回述べた「財務省案」が出てきて、大混乱となっている。筆者は、この財務省案に賛成ではない。マイナンバーカードを使う点など多くの問題があると考えており、基本的には低所得者に的を絞った給付が望ましいと考えている。

問題の本質は「財源問題」にあり
軽減税率で失われる税率はいかほどか

 この問題の本質は、「財源問題」である。図表は諸々の対策を比較したものである。

 軽減税率(税率は8%とする)導入により失われる税収、つまりこれを導入するための財源は、すべての飲食(酒を除く)を対象にすると、1.3兆円の軽減税となる。消費税率に直すと0.5%分である。この失われる税収を所得税で賄おうとすると、現在所得税収は約15兆円なので、我々の所得税を一律10%近く増税する必要がある。

 軽減税率の対象を生鮮食料品に限定すると、その減収額は3400億円となるので、財源的には何とか対応できる水準であろう。

 現在行われている簡素な給付措置は1300億円程度、給付付き税額控除(消費税還付)だと、300万円以下の世帯に1人2万円配る案で2000億円(さらに300万円から400万円の世帯に1人1万円配ると3000億円)となる。

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森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]

(もりのぶ しげき)法学博士。東京財団上席研究員、政府税制調査会専門家委員会特別委員。1973年京都大学法学部卒業後、大蔵省入省、主税局総務課長、東京税関長、2004年プリンストン大学で教鞭をとり、財務省財務総合研究所長を最後に退官。その間大阪大学教授、東京大学客員教授。主な著書に、『日本の税制 何が問題か』(岩波書店)『どうなる?どうする!共通番号』(共著、日本経済新聞出版社)『給付つき税額控除』(共著、中央経済社)『抜本的税制改革と消費税』(大蔵財務協会)『日本が生まれ変わる税制改革』(中公新書)など。
 

 


森信茂樹の目覚めよ!納税者

税と社会保障の一体改革は、政治の大テーマとなりつつある。そもそも税・社会保障の形は、国のかたちそのものである。財務省出身で税理論、実務ともに知り抜いた筆者が、独自の視点で、財政、税制、それに関わる政治の動きを、批判的・建設的に評論し、政策提言を行う。

「森信茂樹の目覚めよ!納税者」

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