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組織の病気~成長を止める真犯人~ 秋山進

こんなに働く時間を減らして、
日本企業は世界で勝てるのか?

秋山進 [プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役]
【第29回】 2015年10月26日
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努力を長く続けるスポーツ選手、研究者
時短・効率化をすすめる日本企業

スポーツ選手や研究者の地道な努力が讃えられる一方、会社員の世界では「残業ゼロ」「休日の増加」の風潮が強まっている

 ラグビーW杯イングランド大会で活躍した日本代表チームは、決勝トーナメントには進めなかったものの、優勝候補の南アフリカを含む3勝という快挙を達成した。これは、ポテンシャルの高い選手たちが、科学的に根拠のある過酷なトレーニングを行った「努力」の結果だ。選手たちの天性の才能だけでもなければ、監督の指導力だけでもない。彼らは常日頃、早朝5時から3部練習、4部練習……と、とんでもなく長い時間トレーニングし続けていたのである。

 NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』などを見ていてもわかるが、偉業を成し遂げた研究者もスポーツ選手も、みんな長い時間努力に努力を重ね、失敗に失敗を重ねている。その結果、やっと光明が見えて、その後も懸命に努力し続けたのちに、やっと成功を掴んでいるのだ。振り返ってみると、「無駄打ちだったな」という過程もたくさんあったことだろう。

 一方、昨今の日本の大企業の多くは「時短」「効率化」「無駄の排除」がキーワードになっている。会社の業務は無意味で無駄な時間の塊だ。長時間会社にはいるけれど、その実、ダラダラと無意味な会議や時間を過ごしているだけで、非効率的、非能率的になっていることも多い。「仕組みを変えて、無駄を排除し、全員が早く帰れるようにしよう」というのは、素晴らしいことだと思う。早く帰れば、仕事だけでなく私生活も充実する。非常に結構なことではないか。

 ただし、これは基本的な仕事の枠組みが確立されている「オペレーション業務」に関しての話である。それであれば、「時短」「効率化」「無駄の排除」を追求することによって、一定の生産性の向上、個人の満足度向上にも寄与できる。

 ところが、プロフェッショナルの世界、イノベーションの世界ではそうはいかない。プロフェッショナルな人材に求められるのは、「限界への挑戦」である。よく考え、動き、トライし、学びと気づきを繰り返し、鍛錬を重ねる。どれだけ、そのサイクルを回してきたかがものを言う。そして、イノベーションは、失敗の連続である。誰もやったことのない価値を見つけ生み出すプロセスは、すべてが試行錯誤なのである。最初から答えにたどり着くことなどない。

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秋山 進 [プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役]

リクルート入社後、事業企画に携わる。独立後、経営・組織コンサルタントとして、各種業界のトップ企業からベンチャー企業、外資、財団法人など様々な団体のCEO補佐、事業構造改革、経営理念の策定などの業務に従事。現在は、経営リスク診断をベースに、組織設計、事業継続計画、コンプライアンス、サーベイ開発、エグゼクティブコーチング、人材育成などを提供するプリンシプル・コンサルティング・グループの代表を務める。京都大学卒。国際大学GLOCOM客員研究員。麹町アカデミア学頭。

著書に『「一体感」が会社を潰す』『それでも不祥事は起こる』『転職後、最初の1年にやるべきこと』『社長!それは「法律」問題です』『インディペンデント・コントラクター』『愛社精神ってなに?』などがある。


組織の病気~成長を止める真犯人~ 秋山進

日本には数多の組織があり、多くの人がその中に属しています。組織は、ある目的のために集まった人たちで成り立っているにも関わらず、一度“病”にかかれば、本来の目的を見失い、再起不能の状態へと陥ります。しかも怖いのが、組織の中の当人たちは、“病”の正体が分からないどころか、自分たちが“病”にかかっていることすら気づけない点です。

この連載では、日本の組織の成長を阻害している「組織の病気」を症例を挙げて紹介。コンプライアンスの観点から多くの企業を見てきた筆者が考える治療法も提示します。

「組織の病気~成長を止める真犯人~ 秋山進」

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