最近、NTT再々編に関する議論が新聞を賑わせていますが、その水面下の事情を探ると、民主党政権が目指す“政治主導”の問題点が見えてきます。
ソフトバンクの論拠の弱い主張
NTT再々編の議論の発端は原口総務大臣です。昨年末に発表した原口ビジョンの中で、2020年までに日本全国のすべての世帯にブロードバンド・インフラ(“光の道”)を整備すると提唱しました。その後、今年3月になって目標を2015年に前倒しするとともに、総務大臣直属の組織であるICTタスクフォースに対し、5月中旬までに「アクセス網整備の方法(NTTの経営形態を含む)」を検討し、基本的な方向性を打ち出すように指示したのです。
それを受けて、ICTタスクフォースで2ヶ月にわたって集中的に検討が行なわれたのですが、5月14日にその方向性が出されることもあり、特に最近はNTT再々編に関する報道が多いのです。
ちなみに、“光の道”とは、名前のとおり光ファイバー網を指すと一般的に考えられています。NTTやCATV会社などがこれまで日本中で頑張って整備してきたこともあり、だいたい日本の90%の地域では既に光ファイバー敷設が可能(ユーザが希望すればすぐ敷設される)となっており、残り10%の地域ではこれからインフラ整備が必要となっています。
NTTの組織形態については、“光の道”を整備する(日本中の全家庭に光ファイバーをつなぐ)ため、NTTが持つアクセス網(家庭までのラスト・ワンマイル)を今のNTT東西から分離して別会社にすべき、という主張がよく言われています。
それをもっとも強く主張しているのはソフトバンクですが、正直、その内容には首を傾げざるを得ません。
光ファイバー網の整備とNTTアクセス網の別会社化は、政策論的には次元が異なる話です。残り10%の地域にも光ファイバー網を整備しようと思ったら、NTTの組織形態とは関係なく、整備を行う気がある事業者に政府が補助を行なえば済む話です。