インターネットショッピングの普及に伴って、商品の受け取り・配送拠点としてのコンビニエンスストアの存在感が高まっている。自宅で商品が届くのを待つよりもコンビニ店頭で受け取った方が便利と感じる消費者が予想以上に多いのだ。(取材・文/フリージャーナリスト 田原寛)
本格始動「オムニセブン」の利用者は
大半がセブン店頭での受け取りを選ぶ
11月1日に本格始動したセブン&アイグループの総合インターネットショッピングサービス「omni7(オムニセブン)」。イトーヨーカ堂やそごう・西武、ロフト、赤ちゃん本舗などグループ各社の商品をネット通販できるほか、書籍・雑誌などを中心とするセブンネットショッピングも同一のアカウントで利用できるサービスだ。2018年度に売上高1兆円を目標としている。
そして、オムニセブンの最大の目玉は、約1万8000の店舗網を持つセブン-イレブンの店頭で商品を受け取れることだ。
ネット通販最大手のアマゾンジャパンなどが即日自宅配送サービスを実施している昨今、「セブン-イレブン店頭で商品を受け取るメリットがどれほどあるのか」という疑問の声もあったが、ふたを開けてみると「オムニセブンで注文した人の7〜8割が、セブン-イレブン店頭で商品を受け取っている」(セブン&アイ・ホールディングス)という。
さぞかし予想外の事態かと思いきや、「(オムニセブンが立ち上がる前の)セブンネットショッピングでも7割が店頭受け取りだった」(同)とのことで、セブン&アイにしてみれば、あくまで想定通りの結果のようだ。
これまで、「ラストワンマイルを制する者がネットショッピングを制す」と言われてきた。商品の検索や注文、支払いはネットで済ませることができても、最後の受け取りだけは物理的な配送網に利便性が左右される。利用者宅までの“ラストワンマイル”をカバーする、きめ細かい配送サービスが競争優位性を左右されると見られてきたのだ。
しかし、スマートフォン一つでいつでもどこでも商品を選び、注文することに慣れてしまった消費者にとっては、商品を受け取るために、わざわざ自宅で待機することは苦痛でしかない。
『「時間消費」で勝つ!』の共著者で、消費財メーカーや小売・サービス業の経営に詳しいフロンティア・マネジメントの松本渉マネージング・ディレクターは、「ラストワンマイルは消費者が自宅で待っていてくれることを前提としているが、今の消費者が最も重視するのは“時間価値”。つまり、ラストワンミニット(商品を受け取るまでの最後の1分間)にいかに柔軟に対応し、消費者を時間的・空間的制約から解放することができるかが重要になる」と指摘する。