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吉田恒のデータが語る為替の法則

「悪く」はないが「行き過ぎ」のユーロ安。
「下がり過ぎ」の限界を試し続けているが…

吉田 恒
【第80回】 2010年5月19日
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 ユーロ安が止まりません。

 ところが、これだけ続いているユーロ安ですが、必ずしも「悪いユーロ安」というわけではなさそうなのです。

 ただ、そうは言っても、さすがに「売られ過ぎ」と「下がり過ぎ」の懸念も強くなっているようです。

 ユーロはこの半年間で、対円では130円を大きく上回り、対米ドルでも1.5ドルを上回っていた水準から、110円、1.2ドル割れをうかがうところまで下落してきました。

 ただ、これほどの大幅なユーロ安となっても、それは必ずしも「悪いユーロ安」ではなさそうなのです。

 「悪いユーロ安」について、経済への悪影響が懸念されるユーロ安と判断された結果、政策当局が阻止・是正に動くといった意味で定義すれば、それは、1999年に誕生したユーロの歴史の中でたった一度だけあったのです。

 2000年9月に、G7(7ヵ国財務相・中央銀行総裁会議)、日米欧の先進国は、ユーロ買い支えを目的とした協調介入に出動しました。ある意味で「ユーロ防衛介入」だったわけですから、G7が「悪いユーロ安」と判断した結果だったと言えるでしょう。

1ユーロ=100円、1ドル割れなら
「悪いユーロ安」に

 それでは、そのような「悪いユーロ安」とはどういったものだったのでしょうか?

 為替の適正水準の目安に「購買力平価」という考え方があります。この2000年9月の「悪いユーロ安」は、適正水準である購買力平価を、対円、対米ドルともに2~3割も下回っていたのです。

 このように、適正水準を2~3割下回ったものが「悪いユーロ安」だとすると、足元のユーロ安は決して「悪い」とは言えないでしょう。

 適正水準である購買力平価は、4月末現在だと、ユーロ/円は115円、ユーロ/米ドルは1.22ドル程度なのです。

 つまり、購買力平価から見ると、この半年間のユーロ安は、適正な水準より割高だったものが修正されてきた動きであって、ここに来て、ユーロがようやく適正水準まで修正されてきたと言えそうです。

 ちなみに、「悪いユーロ安」で適正水準を2割以上も下回ることになれば、ユーロ/円は100円割れ、ユーロ/米ドルは1ドル割れといった計算になります。

 こんなふうに見てくると、半年間にわたって続いているユーロ安ですが、必ずしも経済に悪影響を及ぼす「悪いユーロ安」ではなく、普通ならば、ユーロ買い介入をまだまだ警戒感しなくてもよい水準だと言えそうです。

 ユーロが「悪いユーロ安」と見られる水準まで下落し、政策当局の防衛介入があるまで止まらないのかと問われれば、決してそうではないと思います。

 最もわかりやすいの事例は、「100年に一度の危機」の中で2009年初めにかけて展開したユーロ下落です。ECB(欧州中央銀行)などの市場介入がなくても、自然に止まりました。

 それでは、なぜ「100年に一度の危機」の際のユーロ下落は終わったのでしょうか?

 その理由の1つには、「下がり過ぎ」の限界に達したということがあったと思います。

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吉田 恒 

立教大学文学部卒業後、自由経済社(現・T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。財務省、日銀のほかワシントン、ニューヨークなど内外にわたり幅広く取材活動を展開。同社代表取締役社長、T&Cホールディングス取締役歴任。緻密なデータ分析に基づき、2007年8月のサブプライムショックによる急激な円高など、何度も大相場を的中させている。2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケット エディターズ」の日本代表に就任。


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