コールセンターのオペレーターが受ける電話は、苦情で始まるものが少なくなく…

 お客様問い合わせ先の「コールセンター」。電話をかけても、長い時間待たされる、オペレーターからマニュアル的な応答しか返ってこない、会話がかみ合わない……そんな経験を多くの人が持っているのではないだろうか。

 電話をかける立場からすれば、たとえフリーダイヤルで丁寧な口調で対応されても、ついイライラしてしまうこともあるだろう。

 コールセンターの実態に迫ったルポルタージュ『ルポ コールセンター 過剰サービス労働の現場から』(朝日新聞出版)では、企業が「顧客の要望に応える」役割と「業務を集約し、効率化する」役割を追求する結果生まれたコールセンターの「構図」にその理由があると指摘する。本来ならば企業が負うべき「サービス」の責任を、商品や売り場の情報を十分に与えないまま「コールセンター」で働く人に押し付けているのだ。

 現場を取材した著者の仲村和代さんによれば、コールセンターのオペレーターが受ける電話は、苦情で始まるものが少なくなく、電話がつながった瞬間「ぶっ殺す」と暴言を吐かれたり、「おれはオペレーター3人ぐらい泣かせたことあるんだ」と凄まれたりすることもあると言う。

 顧客のクレームを受け止めることに耐え切れずに、数日で辞めてしまう人もいれば、体調不良で辞める人も跡を絶たない。慢性的な耳鳴りや頭痛は、パソコンの前に座りっぱなしで、ヘッドセットを長時間着けたままでいるオペレーターの“職業病”と言えるだろう。

 オペレーターの離職率は年間9割と非常に高く、人材の入れ替わりが激しいため、顧客が満足するようなサービスを提供しにくくなってしまうという、慢性的な悪循環に陥っている。またコールセンター業務は、従業員のうち87%が非正規雇用。オペレーターに限定すると、非正規雇用は93%にも上る。不況の影響で、正規雇用の仕事に就くことができず、やむを得ず非正規雇用で働く人も多い。