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トンデモ人事部が会社を壊す

頑固上司の絶滅が、国力を衰退させる!

山口 博
【第33回】 2015年11月17日
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かつてはどこでも見かけた頑固上司が、年々少なくなっている。パワハラと紙一重の境界に棲む彼らだが、コーチングスキルを駆使し始めた途端、とてつもないパワーを発揮する。頑固上司の保護こそが、わが国経済再生の鍵を握っているのではないか。

「なんだ、このウ○コ色は!!!」
罵声を浴びせるトンデモ頑固上司

 「誰だ!!こんなみやげものを買ってきたのは!!○○市だったら、○○が、△△が、□□があるだろう!!探してきたのか!!」――。出張みやげの箱を手にかざして、大声を張り上げながら部長室から出てきたK宣伝部長。私が、某国内大手金融機関に在籍していた時代の話である。着任して初めての出張帰りに、私がキオスクで買ってきた饅頭に対して、K部長はキレた。

目を吊り上げ、痩身をひねらせながら部下に罵声を浴びせる――一見パワハラ上司にも思えるK部長が、部下たちに愛されていた理由は?

 別の機会に、いただきもののお菓子をおすそ分けしようと、「つまらないものですが」と机上に置くと、「つまらないと思うのだったら、持ってくるな!!」、「本当につまらないと思っているのか!!」と高らかな声で切り返された。

 企画会議では、「そんな企画がおもしろいと思っているのか!!もっと、響くものがないのか!!何も浮かばないのか!!」という大声が響く。極めつけは、パンフレット作成の色校正の最終確認での出来事だ。「なんだ、このウ○コ色は!!そんな色が心地よい色だと思っているのか!!」――。怒鳴り声は、廊下にまで響き渡ったものだ。

 多くの方は、これらのK部長の発言は、「プロフェッショナル・ビジネスパーソンとしてあるまじき発言だ」、「ビジネスマナーを学びなおすべきだ」、「サディスティックにもほどがある」、「パワハラに該当するおそれがある」――などとお感じになるに違いない。そして、このような言わば頑固上司は年々少なくなっているし、最近ではほとんど見かけない。しかし、それは望ましいことなのだろうか。

 もちろん、怒鳴られて嬉しいはずはない。私も出張みやげの饅頭にケチを付けられたときには、「人がポケットマネーで買ってきたものに対して何を言うか!!」、「二度と買ってくるものか!!」、「他人に聞こえる声で、それも怒鳴るとは何事か!!」と思ったものだ。

 同僚も私と同じように義憤に駆られているかと思いきや、「洗礼を受けたね」という表情で、ニヤニヤされたことに、私の憤怒は倍増したことを、今でもありありと思い起こす。

 その後、同僚の行動を見てみると、「行列ができる○○のお店に並んで買ってきました」、「お取引先の○○さんが地元で一押しだとおっしゃるので、東京にはないようですので探してきました」、「池波正太郎の著書で紹介されていた○○堂の和菓子です」――などと言いながら、確かに珍しいものを競っておすそ分けしているではないか。

 私は決して、K部長の言いなりにはなるまいと思いながらも、出張のたびに、一般にあまり知られていない、地元の名産品が気になる度合が高まってしまうようになった。

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山口 博

やまぐち・ひろし/慶應義塾大学法学部政治学科卒(サンパウロ大学法学部留学)、長野県上田市出身。国内大手保険会社課長、外資系金融保険会社トレーニング・シニア・マネジャー、外資系IT人材開発部長、外資系企業数社の人事部長、人事本部長歴任後、現在、コンサルティング会社のディレクター。横浜国立大学大学院非常勤講師(2013年)、日本ナレッジ・マネジメント学会会員。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)がある。

 


トンデモ人事部が会社を壊す

サラリーマンの会社人生のカギを握る人事部。しかし近年、人事部軽視の風潮が広まった結果、トンデモ人事部が続々と誕生している。あっと驚く事例をひもときながら、トンデモ人事部の特徴や、経営陣がすべき対処法などを探っていく。

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