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所得増が支出につながらない
2期連続マイナス成長の根深さ

山田 久 日本総合研究所・チーフエコノミスト

山田 久 [日本総合研究所・調査部長・チーフエコノミスト]
2015年11月19日
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弱いながらも景気回復基調は維持
だが今後には懸念材料

基本的には雇用・賃金環境は改善に向かっており、悪い面ばかりではないが…

 今年7~9月期の実質経済成長率は、前期比年率▲0.8%(前期比▲0.2%)と2四半期連続のマイナスとなった。

 需要項目別に見れば、設備投資、在庫投資、公共投資の落ち込みが、マイナス成長になった原因である。

 2015年度入り後の日本経済は、そもそも最終需要の回復が鈍く、余剰在庫がなかなか掃けない状況が続いてきた。そうしたもとで、昨年秋に策定された緊急経済対策の効果が一巡し、公共投資が前期比で落ち込んだ(前期比年率▲1.3%)。加えて、先行き不透明感の高まりから、設備投資先送りの動きも広がった(前期比年率▲5.0%)。この背景には、中国経済の失速観測が大きく強まるなか、米国の利上げの影響への懸念も加わって、内外株式市場が大幅な調整を余儀なくされたことがあった。

 もっとも、マイナス面ばかりではない。在庫投資が大幅な下押しファクターとなっているが(前期比寄与度▲0.5%)、これはそれだけ在庫調整が進展したことを意味しており、むしろ先行きの景気にとってはプラスファクターである。

 また、日本国内における消費活動は堅調である。基本的には雇用・賃金環境が改善に向かっていることが背景にあるが、7~9月期には猛暑効果やシルバーウィーク効果も押し上げに作用した。加えて、大きいのは「爆買い」に象徴される訪日外国人の日本国内での積極的な消費行動である。財輸出については低迷が続いているが、サービスの対外取引も含むGDP統計ベースでの輸出等が前期比年率+10.9%と高い伸びを示したのは、年換算で2.8兆円超に拡大したインバウンド消費の寄与がある。

 このように、夏場から秋口にかけての日本経済は、生産サイドからみれば弱い動きになったものの、最終需要は弱くはない。加えて、企業業績が改善傾向を続け、賃金も緩やかながらも増加の方向にある。

 つまり、経済の自律回復メカニズムは弱いながらも作動を続けており、2四半期連続のマイナス成長とはなったものの、景気回復基調は維持されていると判断される。

 もっとも、この先、自律回復メカニズムが強まっていくかどうかは予断を許さない。「所得面」と「支出面」のギャップが懸念材料である。

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山田 久 [日本総合研究所・調査部長・チーフエコノミスト]

やまだ ひさし/1987年京都大学経済学部卒業、2003年法政大学大学院修士課程(経済学)修了。住友銀行(現三井住友銀行)、日本経済研究センター出向等を経て93年より日本総合研究所調査部出向。同経済研究センター所長、マクロ経済研究センター所長、ビジネス戦略研究センター所長等を経て11年より現職。専門はマクロ経済分析、経済政策、労働経済。著書に「北欧モデル 何が政策イノベーションを生み出すのか(共著)、「市場主義3.0」、「デフレ反転の成長戦略『値下げ・賃下げの罠』からどう脱却するか」、「賃金デフレ」など。


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