宅配業界の雄、ヤマトホールディングス。インターネット通販の拡大に支えられ、売上高はこの5年間右肩上がり。しかし、足元では思わぬ伏兵が現れている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 清水量介)

「会社から言われたから料金を値上げしたいと言ってきた。口調こそ申し訳なさそうでしたが、決意は固そうでしたね」

 2014年、あるインターネット通信販売会社の経営者は、ヤマトから料金の値上げに関する提案を持ち掛けられた。経営者は逡巡したものの、結局、値上げに応じたという。

 物流業界では長年、激しい競争が続いていた。顧客がライバル会社を引き合いに出し、「あちらはもう少し安かったけれど」と言えば、すぐにヤマトも対抗して値下げ。こんなことは当たり前だった。

 ヤマトの売上高はインターネット通販の増加などもあり、5期連続で増収と、好調に見える。しかし、激しい料金競争により採算性が低下、“黄信号”がともっていた。

 ヤマト社内では、採算性を測る際に「個当たり利益」という指標を重視している。荷物1個当たりが稼ぎ出す利益だ。数字は未公表のため、宅配事業が稼ぎ出すセグメント利益を、宅急便の個数(ダイレクトメールは除く)で除して算出してみた。

 グラフを見れば分かる通り、個当たり利益は好調な売上高とは正反対で悪化の一途。11年に30円を超えていたものが、14年には21円にまで下がっている。

 問題は料金だけではなかった。常態化していたのが、異なったサイズでの計上だ。

 顧客の荷物が実際には特大のサイズであるにもかかわらず、契約を取りたいばかりに、小さい荷物として計上。実質的に料金を引き下げていたのだ。

 ところが、これが思わぬ弊害をもたらす。実際に運ぶ荷物の大きさがデータ上の数倍に上ってしまい、トラックや拠点スペースといった物流網がパンク寸前まで追い込まれてしまったのだ。

 13年には無理がたたり、クール便問題が発覚。本来、冷蔵庫で冷やしておくべき荷物を、冷蔵庫の外に放置し、品質が保てない事態が続発した。