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相川俊英の地方自治“腰砕け”通信記

添田町で町長リコールの署名集まるが、新たな疑惑が浮上

相川俊英 [ジャーナリスト]
【第3回】 2010年5月25日
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 福岡県添田町の町長リコールの署名集めが5月20日、1か月の期限を終えた。住民団体「山本町長をリコールする会」(矢野一義代表・以下リコールの会)の発表によると、集まった署名数は3629。町選挙管理委員会による審査を経て正式確定となるが、リコールの会メンバーは皆、住民投票実施に必要な有権者の3分の1(3291人)をクリアしたと、安堵の表情を見せる。リコール活動を激しく批判するチラシが大量に配布されるなど、様々な圧力や妨害の中での署名集めを強いられていたからだ。巨大な見えない力に半ば怯えながらの活動といえた。もっとも、町長の解職は住民投票で過半数の賛成を得て確定する。まだ一件落着とはならない。

 添田町の混迷は、山本文男町長が贈賄で逮捕・起訴されたことから始まる。山本被告は84歳。1971年から連続十期、添田町長を務め、全国町村会長も6期目(事件後辞任)という超大物である。福岡県内はもちろん、全国にその名を轟かせ、自治体関係者に広く知られる存在だ。昨年秋には総務省顧問に推挙されるなど、地方自治体を代表する人物のようにみなされていた。

 そんな山本町長が引き起こしたのが、福岡県副知事への贈賄事件。県町村会長も務めていた山本町長は、県の後期高齢者医療制度の運用に関し、町村会側に有利に取り計らってもらう思惑で、副知事らへの官官接待を重ねていた。そして、実際に便宜を図ってもらった見返りとして、副知事に現金100万円を渡したとして逮捕・起訴された。

 一連の接待や賄賂の原資となったのは、町村会事務局の金。職員が不正経理を重ねて捻出した裏金である。つまり、公金だ。裏金作りに関わった町村会事務局の幹部二人は詐欺で逮捕され、すでに有罪判決を受けている(5月14日)。また、収賄側の副知事も逮捕前に辞任し、いまは刑事被告人として初公判(6月9日)を待つ身になった。地方行政を歪めた責任は大きく、辞任は当然のことだ。

 しかし、責任を全く取らずに開き直っている政治家がいる。汚職事件を主導した山本被告である。彼は2月2日に逮捕された後、県町村会長と全国町村会長を退いたものの、添田町のトップから離れることはなかった。それどころか、保釈後に町議会で事実関係を認める一方で「事件の被害者は私」と平然と語るなど、罪の意識のないことを明らかにしていた。

 こうした姿勢に町内からもさすがに疑問の声があがった。だが、40年に及ぶ長期政権によって築き上げられた支配構造は、半端なものではなかった。町長擁護の署名活動が展開され、町議会での町長不信任案もあえなく否決されてしまった。それならばということで、町民の一部がリコール運動に立ちあがったのである。

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相川俊英 [ジャーナリスト]

1956年群馬県生まれ。放送記者を経て、1992年にフリージャーナリストに。地方自治体の取材で全国を歩き回る。97年から『週刊ダイヤモンド』委嘱記者となり、99年からテレビの報道番組『サンデープロジェクト』の特集担当レポーター。主な著書に『長野オリンピック騒動記』など。


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国政の混乱が極まるなか、事態打開の切り札として期待される「地方分権」。だが、肝心の地方自治の最前線は、ボイコット市長や勘違い知事の暴走、貴族化する議員など、お寒いエピソードのオンパレードだ。これでは地方発日本再生も夢のまた夢。ベテラン・ジャーナリストが警鐘を鳴らす!

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