五日後、帰りのホームルームが終わって、夢は机で帰り支度をしていた。すると、一人の女生徒が目の前に立った。見上げると、それは児玉真実だった。夢の中学時代からの友人である。
 真実は、開口一番こう尋ねた。
「読んだ?」
 それで夢は、「!」という顔になってこう答えた。
「やっぱり、真実だったんだ」
「あ、分かった?」
「あんなことするの、他にいないと思って。他の人に拾われたらどうするつもりだったの?」
「そのときはそのときよ。でも、夢はいつも校庭を見ているから、気づくんじゃないかと思って」
「私、いつも校庭見てる?」
「見てるよ。まるで何かを探しているみたいに」
「そうなんだ……そうかもね」
「で、どうだった? 本」
「うん。面白かったは面白かったけど……これ、なに?」
 と、夢は鞄からその本を取り出した。
 それを受け取りながら、真実が言った。
「なにって、『もしドラ』だよ」
「もしドラ?」
「知らないの? 何年か前に流行ったじゃん!」
「そうなんだ? 全然知らなかったよ」
 悪びれずに言う夢に対し、真実はちょっと呆れたように「夢らしいや」と溜息をついた。それから、気を取り直すとこう言った。
「実は、その本を書いた作者の人と、この前知り合いになってね」
「へえ! この……」と表紙の名前を見て、夢が言った。「──岩崎夏海さん?」
「そう。だけどそれはペンネームで、本名は『北条文乃』っていうんだ」
「北条文乃?」
「うん。北条文乃……って知らない?」
「知ら……」
 ──と、そこで夢は気がついた。
「あ、この小説に出てくる人?」