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宿輪ゼミLIVE 経済・金融の「どうして」を博士がとことん解説

イエレンFRB議長は賃上げを重視
正常化する米国金融政策と日本への影響

宿輪純一 [経済学博士・エコノミスト]
【第24回】 2015年12月2日
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国によって異なる中央銀行の業務目的

 米国の中央銀行であるFRB(Federal Reserve Board:連邦準備制度理事会)が、2015年12月15日~16日のFOMC(連邦公開市場委員会:Federal Open Market Committee) において、10年振りの利上げを実施する可能性が高まっています。さらに金融市場では、すでにその先の利上げの計画をも織り込み(予想し)つつあります。

 米国は2008年9月に発生した世界金融危機「リーマンショック」の緊急時対応として、2008年11月から量的金融緩和を続け、2015年11月まで7年間継続しました。この量的金融緩和は米国株式を7年間にわたって上昇させ続けたエンジンとなりました。しかし、FRBは2015年11月に量的金融緩和を終了し、徐々に資金量を減らしています。次は、金利の引き上げ(利上げ)という流れとなるわけです。

 世界に数ある中央銀行の業務目的は同じ、と考えている方が多いかもしれませんが、実は、各国の中央銀行ごとにその目的は異なります。各国の中央銀行法を見るとそのことがよくわかります。たとえば、ECB(欧州中央銀行:European Central Bank)は、ある意味一番“中央銀行らしい”中央銀行であり、「物価」の安定のみを目標としています。それに対し、FRBは「物価」の安定と「雇用」の最大化(景気対策)の2つを目標としているめずらしい中央銀行です。

 ちなみに日本銀行の場合は、物価の安定のほかに、政府の経済政策に整合性のあるもの、と半歩だけ踏み込んだ形になっています。具体的には、日本銀行法には政府との関係として、第四条に「日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない」となっています。つまり「政府が景気刺激策をとっているときに、引き締めは行うな」ということで、ある程度、方向性を合わせなければなりません。

雇用の最大化がFRBの目標

 経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)には、景気指標として失業率が入るのが一般的です。また、世界各国の経済当局には「強い思い」というものがあることが多いのです。米国の政策担当者の強い思いには、米国における最大の金融危機であった「大恐慌」を起こさない、というトラウマに近いものがあります。そのため中央銀行ですら、景気対策、とくに雇用の最大化に注力しています。このような中央銀行は世界に類を見ません。

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宿輪純一[経済学博士・エコノミスト]

しゅくわ・じゅんいち
 博士(経済学)・エコノミスト。帝京大学経済学部経済学科教授。慶應義塾大学経済学部非常勤講師(国際金融論)も兼務。1963年、東京生まれ。麻布高校・慶應義塾大学経済学部卒業後、87年富士銀行(新橋支店)に入行。国際資金為替部、海外勤務等。98年三和銀行に移籍。企画部等勤務。2002年合併でUFJ銀行・UFJホールディングス。経営企画部、国際企画部等勤務、06年合併で三菱東京UFJ銀行。企画部経済調査室等勤務、15年3月退職。4月より現職。兼務で03年から東京大学大学院、早稲田大学、清華大学大学院(北京)等で教鞭。財務省・金融庁・経済産業省・外務省等の経済・金融関係委員会にも参加。06年よりボランティアによる公開講義「宿輪ゼミ」を主催し、4月で10周年、開催は200回を超え、会員は“1万人”を超えた。映画評論家としても活躍中。主な著書には、日本経済新聞社から(新刊)『通貨経済学入門(第2版)』〈15年2月刊〉、『アジア金融システムの経済学』など、東洋経済新報社から『決済インフラ入門』〈15年12月刊〉、『金融が支える日本経済』(共著)〈15年6月刊〉、『円安vs.円高―どちらの道を選択すべきか(第2版)』(共著)、『ローマの休日とユーロの謎―シネマ経済学入門』、『決済システムのすべて(第3版)』(共著)、『証券決済システムのすべて(第2版)』(共著)など がある。
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「円安は日本にとってよいことなんでしょうか?」「日本の財政再建はどうして進まないのでしょうか」。社会人から学生、主婦まで1万人以上のメンバーを持つ「宿輪ゼミ」では、経済・金融の素朴な質問に。宿輪純一先生が、やさしく、ていねいに、その本質を事例をまじえながら講義しています。この連載は、宿輪ゼミのエッセンスを再現し、世界経済の動きや日本経済の課題に関わる一番ホットなトピックをわかりやすく解説します。

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