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組織の病気~成長を止める真犯人~ 秋山進

「議論してはいけない病」の会社はやがて滅びる

秋山進 [プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役]
【第31回】 2015年12月7日
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重要なことを話し合っているように見える会議でも、「議論してはいけない」ことに実は触れていなかったりする

 会社には、「議論してはいけないこと」がある。

 日経新聞(2015年8月16日付)の『日曜に考える』というコーナーに「経済白書に映る戦後経済」という記事が掲載されていた。

 「日本の問題は必要な議論ができない雰囲気がうまれてしまうこと。90年代は銀行の不良債権について突っ込んだ議論を避ける空気になり、正しい対応ができなかった」

 経済企画庁(現・内閣府)の敏腕エコノミストだった小峰隆夫氏は、90年代のバブル崩壊時の銀行の不良債権問題について、こう振り返っている。

 当時、銀行の情報は大蔵省が独占し、議論さえ許されなかったそうで、ある時、経済企画庁内で深刻な金融状況を分析する報告書をまとめようとしたら大蔵省から抗議の電話があり、「もし悪影響が出たらだれが責任を取るのか」と脅されたそうだ。

 似たようなことが70年代にもあったという。焦点は、「1ドル=360円」からの切り上げ問題だった。当時の政権は「1ドル=360円からの切り上げは断固阻止」の姿勢だったが、「欠かせない重要なテーマなので書くべきだ」という声が経済企画庁内であがり、草案では若干の言及もした。しかし、「切り上げ容認と思われかねない」という空気に押され、円についての記述はすべて消されたのだという(以上、日本経済新聞『日曜に考える』〈2015年8月16日付〉より)。

 これを読んで、「お国は大変だな」と思ったかもしれない。しかしこれは、民間企業でも日々起きている問題で、決して他人事ではない。

 商品・サービスの安全性の問題、新技術や市場の変化への対応、新戦略の実施…など、対応が非常に難しい問題はどの会社にもある。では、会社としてどう対処すべきか。論争ばかりもしていられないから、どこかで対応を決め、議論に終止符を打つことになる。

 「100%安全です!」「この戦略で進めば未来は明るい!」と宣言した瞬間からは、それに基づいて不満はありつつも前に進む。そして、たとえ状況が悪くなったとしも突っ走り続けることが求められ、疑問をさしはさむこと、疑問の解消に向けてアクションプランをつくること、それらすべてが問題行動として会社組織から糾弾されることになるのだ。

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秋山 進 [プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役]

リクルート入社後、事業企画に携わる。独立後、経営・組織コンサルタントとして、各種業界のトップ企業からベンチャー企業、外資、財団法人など様々な団体のCEO補佐、事業構造改革、経営理念の策定などの業務に従事。現在は、経営リスク診断をベースに、組織設計、事業継続計画、コンプライアンス、サーベイ開発、エグゼクティブコーチング、人材育成などを提供するプリンシプル・コンサルティング・グループの代表を務める。京都大学卒。国際大学GLOCOM客員研究員。麹町アカデミア学頭。

著書に『「一体感」が会社を潰す』『それでも不祥事は起こる』『転職後、最初の1年にやるべきこと』『社長!それは「法律」問題です』『インディペンデント・コントラクター』『愛社精神ってなに?』などがある。


組織の病気~成長を止める真犯人~ 秋山進

日本には数多の組織があり、多くの人がその中に属しています。組織は、ある目的のために集まった人たちで成り立っているにも関わらず、一度“病”にかかれば、本来の目的を見失い、再起不能の状態へと陥ります。しかも怖いのが、組織の中の当人たちは、“病”の正体が分からないどころか、自分たちが“病”にかかっていることすら気づけない点です。

この連載では、日本の組織の成長を阻害している「組織の病気」を症例を挙げて紹介。コンプライアンスの観点から多くの企業を見てきた筆者が考える治療法も提示します。

「組織の病気~成長を止める真犯人~ 秋山進」

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