最近、対人関係の問題などで心を病む人が増えています。会社は多くの人が集まる場所であり、そこには、上司や先輩、同僚、部下や取引先など、多くの人間関係が生じます。それらの人間関係は、いずれもストレス要因になり得ます。職場のストレスをなくし、働きやすい環境をつくるのは、現場を預かる管理職やリーダーの仕事のうち。本連載では、『部下をもつ人の職場の人間関係』を上梓した対人関係療法の第一人者で精神科医の水島広子氏が、職場のストレスをなくし、円滑な人間関係をつくるコミュニケーションのコツをアドバイスします。第2回のテーマは、「機能するリーダー」と「怖れのリーダー」の違いについて。

「怖れのリーダー」から「機能するリーダー」になろう

人を従わせるのがよいリーダー?

「リーダーシップを発揮する」ということは、往々にして、そのリーダーが目指す方向に強引であっても従わせる、ということと誤解されがちです。

 たしかに、非常時には、そういう姿勢が必要となる場合もあるでしょう。

 しかし、普段からそういうことが常態化してしまうと、「指示されていないからやらない」と、部下を無力化・消極化してしまい、本来部下が持っている能力が発揮できずに損ねてしまう、ということにもなりかねません。言われたことしかやらない部下をつくってしまう危険があります。

「怖れ」にとらわれているリーダーは、守りに入りがちです。

「怖れ」にとらわれているというのは、どういうことかと言うと、「もしも○○したらどうしよう」というような無力で不安な強迫観念に振り回されている、ということです。

 例えば、「人に任せて、うまくいかなかったらどうしよう」という思いに振り回されると、やたらと仕事を抱え込んで過労となったり、人に干渉して自分のやり方でやらせようとしたりすることになります。

 それでは、部下は自分の力を十分に発揮することができませんし、仕事を任せた意味もありません。

「怖れ」にとらわれているリーダーにおなじみのマイナスの感情は、いらだち、焦り、不安、孤独感、無力感、猜疑心、警戒心などといったところでしょう。

 それら自体がストレスフルですし、リーダーとしても機能しないのであれば、そのような「怖れ」にとらわれるメリットは何もありません。