倒産の危機に見舞われながらも、獺祭を随一の純米大吟醸酒に育て上げ、躍進をつづける旭酒造。一方、1871(明治4)年創業の牛鍋屋をルーツとする柿安本店も「伝統と革新」を合い言葉に、BSE(牛海綿状脳症)問題という災禍をデパ地下惣菜店の積極展開で乗り越え、精肉や和菓子、レストランといった5事業を擁して成長中です。「食へのこだわり」「お客さま第一主義」など多くのポイントで共鳴する赤塚保正・柿安本店社長と桜井博志・旭酒造社長が意気投合し、去る11月17日に「獺祭×柿安」スペシャルイベントが開催されました。柿安の特別懐石メニューが獺祭とともに供される本イベント開始直前、今回のコラボレーションが決まったきっかけや趣向、今後の2社の展望について両社長に聞きました。

「肉×日本酒」は定番化しつつある?!
大きく変化した日本酒の楽しみ方

赤塚 以前から様々な席で桜井さんのお顔は拝見していたのですが、きちんとご挨拶できたのは1年半程前でした。

桜井 私はかなりお酒が入っていましたよね。大変失礼しました(笑)。

赤塚保正社長プロフィル/1963(昭和38)年三重県生まれ。慶應義塾大学法学部を卒業後、米国留学を経て、1989(平成元)年に柿安入社。精肉やレストラン等の現場からたたきあげ、取締役レストラン営業部長、常務、専務を経て2006(平成18)年に社長就任。創業から6代目に当たる。柿安本店は精肉・惣菜・和菓子・レストラン・食品の5事業を展開しており、2016年2月期は売上高440億円、当期純利益14.2億円を見込む。

赤塚 その後、とある立食パーティーでばったり再会したのですが、くしくも2人とも獺祭の入ったグラスを手にしていて。そこへ、ちょうど牛肉ステーキが運ばれてきて、ご縁があったら獺祭と柿安でコラボレーションしたいですね、というお話をしたんです。

桜井 お会いするたび、私はいつも飲んでますね……(苦笑)そう、でもそれが今回の企画の発端でした。ちょうど肉ブームですし、私も獺祭と合わせてみたいと思っていたんです。世間では肉といえばワインなど、日本酒と合うイメージはあまり持たれていないかもしれません。でも、それは質の悪い日本酒と組み合わせてしまっているから。旨い肉と美味い日本酒なら、最高のマリアージュになると私は確信していました。

赤塚 実際、日本酒と肉って合うなと感じている方たちは大勢いらっしゃると思います。私たちの銀座店は開業から40数年が経ちますが、近年はお客さまのお酒の飲み方がかなり変化されたなと実感しています。

桜井 どんなふうに変わってきましたか?

赤塚 とりあえずビール”から始めるパターンは変わりませんが、小瓶かグラス程度にとどめて、その先は日本酒に切り換えるお客さまが増えているんです。かつて日本酒と言えば、おじさんが熱燗の徳利を傾けるイメージでしたが、最近はまったく違います。

桜井 日本酒の愛飲者といえば、楽しむためではなく安く酔えることが主眼のようなところが長らくありましたよね。

赤塚 そうですよね。今やガラリと変わって、老若男女を問わずオシャレにグラスを傾けて日本酒を楽しんでいらっしゃいます。