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ストレスから無理に逃げる必要はなかった!

~『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』(ケリー・マクゴニガル著)を読む

情報工場
【第6回】 2015年12月5日
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ストレスが害になるという考え方こそ、害になる?

『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』
ケリー・マクゴニガル著/神崎朗子訳
大和書房
342p 1600円(税別)

 スタンフォード大学の健康心理学者ケリー・マクゴニガル博士の「ストレスと友達になる方法」というTEDプレゼンテーションは、再生回数900万回を超える人気コンテンツだ。

 「私はこれまでストレスは健康の敵だ、と教えてきました。でも、それがかえって人の健康に害を及ぼしていたかもしれません」。プレゼンテーションは博士のこんな告白から始まる。

 ちょっと待ってほしい。ストレスが身体に悪いのは今や常識だろう。現実に、ストレスがたまったせいで、胃かいようなど消化器系の病気や、高血圧になったなどという話はあちらこちらで耳にする。もちろん、うつ病などの心の病も、一般的にはストレスが原因とされることが多い。

 私自身、仕事のストレスが原因と思しき胃痛や下痢、耳鳴りなどに悩まされたこともあった。そんな時、病院に行くと、医者は決まって「ストレスが原因です」としか言わない。「治したければ仕事を辞めてストレスのない生活をするしかない」とまで言われたこともある。それなのにマクゴニガル博士は「ストレスは健康の敵」ではないという。どういうことだろうか。

 プレゼンテーションの中で博士は、自らの考え方を180度転換させた、ある研究を紹介する。その研究では、まずアメリカの成人3万人に対し、「去年ストレスを感じましたか?」「ストレスは健康に害があると思いますか?」という二つの質問をした。そして、その8年後に、その3万人の生死を調べたところ、第一の質問に対して「強度のストレスを感じた」と答えた人の8年後の死亡率が、それ以外の人よりも著しく高かった。

 「ほら、やっぱりストレスは身体に悪いじゃないか」と思うかもしれない。ところが、死亡率が高くなる条件は「ストレスを感じた」だけではなかった。「強度のストレスを感じた」人のうち、第二の質問にイエスと答えた人、すなわち「ストレスが健康に害があると信じていた人」のみが死亡率が高かったのだ。驚くべきことに、強度のストレスを感じていても、「ストレスは健康に害があると考えていなかった人」の死亡率は、ストレスを感じなかった人とほとんど変わらなかった。

 研究では、この調査結果を元に、8年間で、ストレスそれ自体ではなく、「ストレスが体に悪いと信じていたこと」で亡くなった人はアメリカ全体で18万人に上ると推計。これは単純計算で1年に2万人ということだ。これは2012年のアメリカでは、皮膚がん、HIV/AIDS、殺人よりも多い死因なのだそうだ。

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浅羽登志也

情報工場シニアエディター。1989年、京都大学大学院修士課程修了後、リクルート入社。同社スーパーコンピュータ研究所にてインターネットに関する研究に従事。1992年、株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)に創業メンバーとして入社。インターネット黎明期からサービス開発・技術開発に携わる。IIJは、日本で最初にインターネット接続の商用サービスを開始したインターネットサービスプロバイダで2006年12月東証一部上場。1999年、IIJ取締役、2004年より2009年までIIJ取締役副社長。2008年より2015年までIIJイノベーションインスティテュート代表取締役社長。2015年7月よりIIJフェロー。情報編集にも興味を持ち、2007年より松岡正剛氏主催のイシス編集学校で松岡流編集術を学ぶ。現在イシス編集学校の師範を務める。2010年に軽井沢へ転居。自然農法で、自家用の蕎麦や大豆を栽培中。

 


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