ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
部下をもつ人の職場の人間関係
【第4回】 2015年12月9日
著者・コラム紹介バックナンバー
水島広子 [精神科医]

「役割期待」のずれが、ストレスを生む

1
nextpage

最近、対人関係の問題などで心を病む人が増えています。会社は多くの人が集まる場所。そこには、上司や先輩、同僚、部下や取引先など、多くの人間関係が生じます。それらの関係は、いずれもストレス要因になり得ます。職場のストレスをなくし、働きやすい環境をつくるのは現場を預かるリーダーの仕事のうち。本連載では、『部下をもつ人の職場の人間関係』を上梓した対人関係療法の第一人者で精神科医の水島広子氏が、職場のストレスをなくし、円滑な人間関係をつくるコミュニケーションのコツをアドバイス。第4回は、ストレスの原因となる「役割期待」のずれについて説明します。

誰もが、他人に対して何らかの役割を期待している

 部下の悩みとしてよく聞くのは、「上司が何を考えているのかわからない」「上司が自分に何を期待しているのかわからない」というものです。

 つまり、曖昧な指示であったり、顔色だったり、そういうものを部下に読ませている上司が多いのです。

 あるいは、本人は何も読ませようとしておらず、部下を完全に放任しているため、困ってしまった部下が上司の顔色を自分なりに読みすぎている、ということもあるでしょう。

 読者の皆様に、ぜひ、身につけていただきたい概念が「役割期待」というものです。私が専門とする対人関係療法では、あらゆる対人ストレスを「役割期待のずれ」として見ます。

 自分が相手に期待している役割を相手が果たしてくれていれば、ストレスは生じません。しかし、自分が期待している役割を相手の人が果たしてくれなかったり、やらないでほしいと思うことをされてしまったりすると、ストレスに感じます。

 あるいは、相手が自分に期待している役割が、自分の苦手なことだったり、やりたくないことだったりするとストレスになります。

「役割期待」は、あらゆる人に対して私たちが抱いているものです。

 例えば、駅ですれ違う他人には、「知らない人」という役割を期待しているので、なれなれしい行動をとられると不快になるのです。

 あるいは、新入社員に「緊張している」という役割を期待していれば、妙に態度の大きい新入社員を見て「まったく最近の若者は」と頭にくることでしょう。

 職場においては、リーダーが部下に期待していることが満たされないと「どうしてこんなこともできないのか!」という不満につながります。

 また、部下から不適切な役割を求められると、「なぜこんな忙しいときに」「どうして自分でやらないのだ」「そんなことが自分にできるだろうか」などと、不満や不安を感じることになります。

 これらは総じて、「役割期待のずれ」ということになります。そのずれがストレスを生むのです。

 自分が相手に期待している役割を相手が実行してくれないので、「どうしてこんなこともできないんだ!」と不満を感じるのです。部下は、自分が望まない役割を期待されると、やる気を失ったり、「とても、できない」と不安に圧倒されたりします。

1
nextpage
スペシャル・インフォメーションPR
ダイヤモンド・オンライン 関連記事
自分の時間を取り戻そう

自分の時間を取り戻そう

ちきりん 著

定価(税込):本体1,500円+税   発行年月:2016年11月

<内容紹介>
生産性は、論理的思考と同じように、単なるスキルに止まらず価値観や判断軸ともなる重要なもの。しかし日本のホワイトカラー業務では無視され続け、それが意味のない長時間労働と日本経済低迷の一因となっています。そうした状況を打開するため、超人気ブロガーが生産性の重要性と上げ方を多数の事例とともに解説します。

本を購入する
著者セミナー・予定
(POSデータ調べ、11/20~11/26)


注目のトピックスPR


水島広子 [精神科医]

1968年東京生まれ。慶應義塾大学医学部卒業、同大学院修了(医学博士)。
摂食障害、気分障害、トラウマ関連障害、思春期前後の問題や家族の病理、漢方医学などが専門。「対人関係療法」の日本における第一人者。
慶應義塾大学医学部精神科勤務を経て、現在、対人関係療法専門クリニック院長、慶應義塾大学医学部非常勤講師(精神神経科)、国際対人関係療法学会理事、アティテューディナル・ヒーリング・ジャパン(AHJ)代表、対人関係療法研究会代表世話人。
2000~2005年衆議院議員として児童虐待防止法の抜本的改正をはじめ、数々の法案の修正実現に尽力。
精神科専門医、精神科指導医(日本精神神経学会)、精神保健指定医、日本認知療法学会幹事、日本うつ病学会評議員、日本摂食障害学会評議員、日本ストレス学会評議員。心の健康のための講演や執筆も多くこなしている。
主な著書に『女子の人間関係』(サンクチュアリ出版)、『怒りがスーッと消える本』、『小さなことに左右されない「本当の自信」を手に入れる9つのステップ』、『身近な人の『攻撃』がスーッとなくなる本』、『大人のための『困った感情』のトリセツ』(以上、大和出版)、『十代のうちに知っておきたい 折れない心の作り方』(紀伊國屋書店)、『プレッシャーに負けない方法―「できるだけ完璧主義」のすすめ』(さくら舎)など、多数。


部下をもつ人の職場の人間関係

イライラ、ムカムカ、モヤモヤ、ウツウツ……。
仕事のストレスの多くは、職場の人間関係から生じます。
つまり、人間関係のコツをつかみ、その質を高めることができれば、ストレスの少ない、イキイキとした職場環境に生まれ変わります。
「対人関係療法」の第一人者が、効果的な社内コミュニケーションのコツをアドバイス。部下と上司のストレスをなくし、人間関係の悩みがスッキリ解消する秘訣とは。

「部下をもつ人の職場の人間関係」

⇒バックナンバー一覧