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莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

このままでは観光立国は見果てぬ夢!
上高地の朽ちた観光案内板が物語る
中国人大航海時代に乗り遅れる日本

莫 邦富 [作家・ジャーナリスト]
【第4回】 2010年6月3日
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 観光立国を目指し始めた日本は、訪日外国人を2019年に2500万人、将来的に3000万人にする目標を定めた。特に海外旅行ブームに沸く中国を最重要市場ととらえ、より多くの中国人観光客に日本に来てもらおうと日本政府から地方自治体まで鼻息が荒い。かなり前から「中国人大航海時代の到来」と予言した私も釣られて興奮する。

 大まかに見れば、日本全土を一応全部回った私は時々、47都道府県を全部制覇したと自慢したくなる。しかし、どうしたわけか、有名な観光地として知られる上高地、白馬、尾瀬はまだ訪問していなかった。だから、上高地に行く機会ができたとき、嬉しさはひとしおだった。

 長野県の飛騨山脈南部の梓川上流に位置する上高地は、北アルプスの谷間にある細長い堆積平野である。実際、訪れてみると、標高約1,500mところにこれほどの広さをもつ平坦な上高地は、中国の盧山と似ていて、幅広い年齢層の人々に喜ばれる山地だと感じた。雪を頂く穂高連峰、槍ヶ岳、焼岳と雪解け水が流れる梓川とのコントラスも絶妙だ。原始林の中を散策しながら、もっと早く上高地に来るべきだったとしきりに後悔した。

 上高地帝国ホテルの関係者をはじめ地元の旅館経営者たちと交流してみると、みんな外国人観光客の誘致にもっと力を入れ、もっと上高地を世界に向けてアピールしたいと言っている。上高地を訪れる観光客の人口が減っていることもこうした切望をさらに熱くしている。実際、上高地で私が出会った人数の多いグループはいずれも台湾からの団体観光客だ。

 しかし、外国人観光客を誘致したい地元の関係者の熱い気持ちとは裏腹に、残念ながら上高地では外国人観光客を迎えるための基本インフラがまだ合格点まで整備されていない。2泊3日、上高地に滞在していた私は、主な観光ポイントを一通り回ってみた。そこで気になるものを発見した。森の中に立てられた観光案内用の看板だ。

 中国語の観光案内はもちろん整備されていない。英語や韓国語による観光案内もまったく見かけなかった。所々に日本語のみの観光案内板が立っているが、この日本語観光案内板を見ると、腹立たしくなる。日本語の文字の一部が判読できなくなった案内板が相当あるからだ。証拠に残そうと思わずカメラのレンズをこれらの案内板に向けた。

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莫邦富(モー・バンフ) [作家・ジャーナリスト]

1953年、上海市生まれ。85年に来日。『蛇頭』、『「中国全省を読む」事典』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーに。そのほかにも『日中はなぜわかり合えないのか』、『これは私が愛した日本なのか』、『新華僑』、『鯛と羊』など著書多数。


莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

地方都市の勃興、ものづくりの精度向上、環境や社会貢献への関心の高まり…中国は今大きく変わりつつある。先入観を引きずったままだと、日本企業はどんどん中国市場から脱落しかねない。色眼鏡を外し、中国ビジネスの変化に改めて目を凝らす必要がある。道案内人は日中を行き来する中国人作家・ジャーナリストの莫邦富氏。日本ではあまり報道されない「今は小さくとも大きな潮流となりうる」新発見を毎週お届けしよう。

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