
2024年の訪日外国人(インバウンド)数が3687万人、年間旅行消費額は8.1兆円で過去最高を記録した。日本がインバウンドマネーで潤う一方で、観光客のマナー違反やオーバーツーリズム(観光公害)も指摘される。日本は観光立国になれるのだろうか。『観光亡国論』の著書があり、『情熱大陸』に出演経験もある東洋文化研究者アレックス・カー氏に話を聞いた。(国際ジャーナリスト 大野和基)
インバウンドで観光立国になるのか
――訪日外国人(インバウンド)が過去最高に増えています。なぜ外国人、特に欧米人が今こぞって日本に行きたがるのでしょうか。
円安はもちろん大きな要因ですが、決してそれだけではない。日本は東アジアの中でも、文化がきちんと残っていることが大きな魅力です。中国は文化大革命や、今の政府の厳しい取り締まりがあって、昔の文化はプレッシャーを受けてなくなったものが多い。
例えば、日本は今でも禅寺でお坊さんが座禅を組んでいる。家元制度があって茶道が残り、茶人が心を込めてお茶を立てています。陶芸家は登り窯を使って、焼き物を昔からの手法で焼いています。日本に来れば、着物姿の人を見かけることもある。日常に、昔からの文化がたくさん残っています
日本の場合、もう一つ重要な要素は、旅がしやすいことです。
――交通網が発達しているということですか?
交通網もそうですが、礼儀作法が行き届いていて、ユーザーフレンドリーです。本音かどうかは分からないけれど、少なくとも表面的には優しい人が多いですね。道が分からなくなっても日本人は親切に教えてくれます。
日本人は声を上げない、礼儀正しい、ジェントルですね。サービス面でも非常に優れています。旅行者からすると、そういう面がとても「楽」です。
だから、西洋からだけでなく、同じアジアの人もたくさん日本に来ていますよね。中国人は元々多いですが、インドからも少しずつ増えています。そのうちアフリカ、南米からも増えてくると思います。
――あなたは『ニッポン景観論』(2014年、集英社新書)に続いて、『ニッポン巡礼』(20年、集英社新書)でも日本の景観の素晴らしさと課題を解説していますね。そこで、あなたが考える「外国人から見た日本の景観ベスト5」を教えてください。