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DOL経営解説委員会~経営の達人が教えるリーダーの教養

儲かるばかりでなくコストもかかる
「爆買い需要」の先を読め

内田和成・早稲田大学大学院商学研究科教授

内田和成 [早稲田大学大学院商学研究科教授]
【第9回】 2015年12月18日
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「爆買い」の一次情報を集めて
「爆買いの先」を見よ

中国人の「爆買い需要」を取り込むためには、コストがかかることも忘れてはならない

前回は企業が勝ち残るための競争戦略について、総論的にお話ししました。今回からは、世間で注目されている様々な事象を基に、企業が考えるべき競争戦略を、ケーススタディで考えてみることにしましょう。

 今回のテーマは「爆買い」です。

 「爆買い」とは、主に中国人観光客が大量に日本製品を購入することです。今や日本の消費を盛り上げる一大要因となっており、日本企業の多くは何とか旺盛な中国人の需要を取り込めないかと考え、試行錯誤を続けています。最近では、あまりの中国人観光客の多さに道路や店が混雑して困るという声も増えているようですが、私は爆買いを日本のビジネスを見直すよいチャンスになるのではないかと、ポジティブに捉えています。

 さて、この爆買いによってどんな影響が生まれているか、想像してみてください。こうした事象について考えるときは、メディアの情報ではなく、爆買いの現場で何が起こっているのかを現場の人に聞いたり、実際に見に行ったりして得た“一次情報”を収集し、その情報を構造化してみることが大切です。

 爆買いの影響というと、この一次情報からわかる「一次需要」がもっとも目立ちますが、私の分析ではそれだけではなく、他にも様々な効果があると思います。それを分析することが、「爆買い」の先を読むことになります。

 爆買いによって生まれる需要を構造化してみると、まず一次需要として、中国人が大量購入することで起きる直接的な経済効果があります。さらには、爆買いから生まれる「二次需要」「三次需要」も存在しています。また一方で、爆買いを誘致するためにかかる必要なインフラの充実や爆買いがもたらす弊害を防ぐための仕組み・仕掛けも必要です。これらをまとめて、ここでは爆買いの「コスト」と呼ぶことにします。

 二次需要、三次需要に関する分析は次回行なうとして、今回は足元で起きている爆買いの一次需要の状況と、日本人がそれを享受するための「コスト」をについてどう考えるべきかについて、解説しましょう。

 まず、爆買いの一次需要の状況はどうなっているのか。これは読者諸氏が報道を通じて知っている、いわゆる「爆買い」という現象そのものです。私が1年ほど前に大阪・ミナミに行った頃には、すでに中国人しかいないといえるほど、爆買いが起こっていました。

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内田和成(うちだ かずなり) [早稲田大学大学院商学研究科教授]

東京大学工学部卒、慶應義塾大学経営学修士(MBA)。日本航空を経て、1985年ボストンコンサルティンググループ(BCG)入社。2000年6月から04年12月まで日本代表。09年12月までシニア・アドバイザーを務める。BCG時代はハイテク・情報通信業界、自動車業界幅広い業界で、全社戦略、マーケティング戦略など多岐にわたる分野のコンサルティングを行う。06年4月、早稲田大学院商学研究科教授(現職)。07年4月より早稲田大学ビジネススクール教授。『論点思考』(東洋経済新報社)、『異業種競争戦略』(日本経済新聞出版社)、『スパークする思考』(角川書店)、『仮説思考』(東洋経済新報社)など著書多数。ブログ:「内田和成のビジネスマインド

 


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企業経営に携わるリーダーたちには、経営戦略、ガバナンス、リーダーシップ、組織、イノベーション・マネジメント、そして自社を取り巻く経済環境の分析など、経営に関する様々な分野の知識が求められる。当連載では、企業経営に携わる読者に対し、経営学の教授、コンサルタント、実業家など「経営の第一人者」と呼ばれる識者たちが、「特任解説員」として専門分野における重要テーマを解説していく。彼らの提言からは、企業経営に関する深い教養を得られるはずだ。
 

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