2016年、新しい年を迎え「今年こそ変わるぞ!」と決意を新たにした人も多いはず。とはいえ、どうせ変わるのなら、戦略的かつ効果的に変化をしたい。今年一年を「変化の年」にするためにはどう考え、行動すればいいか。書籍『変わり続ける―人生のリポジショニング戦略』の著者である出井伸之氏に聞いた。出井氏は2005年にソニー会長兼グループCEOを退任し、2006年に起業、78歳の今も現役経営者として、多数の企業のアドバイザー・顧問なども務めている。どうすれば生涯「個」として活躍できるか。その答えは「戦略的な変化=リポジション」にあった。(まとめ/編集部)

知らず知らずのうちに
誰もが変化を選択している

「変わるのがこわいんです」
 そう言う人も多いと思う。だが、思い返してみてほしい。
 知らず知らずのうちに、誰もが人生で、さまざまな選択をしてきている。ただそれを、無意識的に行っているか、それとも意識的に行っているかの違いだけだ。変化を恐れたり、変化を嫌う人は、変化をしない人ではなく、単に変化を選択していたことに気づいていない人かもしれない。

 例えば、次のような選択をしてきている。
・10代の選択 進学が一番大きな選択だろう。どんな学校に行こうか、文系か理系かなど。受験の合否なども広義の「選択」かもしれない。
・20代の選択 「社会との接点」を選択する重要な時期だ。就職のみならず研究の道に進む、アーティスト活動を行うなど、自分のやりたいことを実現する「場所」選びでもある。ほかにも、結婚が挙げられる。これは「独立組織」(家庭)づくりという方法で、親からの独立を実現することでもある。
・30代の選択 仕事、会社での転機。「果たしてこのままで良いのだろうか?」と、立ち止まったり、自分探しをしたりするときでもある。
・40代の選択 自分の「場所」を求めて深く悩むとき。ある程度仕事もわかり、会社での立ち位置も決まってくる頃。実は、人生最大の岐路が40代である。
・50代の選択 定年へのあせり。人生後半をどう過ごすかを考えるとき。
・60代以後の選択 第三の人生を踏み出すとき。私の場合は「自由人としての自分」を選択したのが、このときである。

 どうだろう。こんなふうに、誰もが自分の人生の中で、知らず知らずのうちに、多くの選択をしていることになる。この選択のときに、意識的に置かれている環境を変化させる「リポジション」という考えを持っていると、より戦略的かつポジティブな選択ができるかもしれない。

ポジティブな人に
良い変化は訪れる

 楽しい充実した人生のためには、環境の変化が必要だが、ただ変わればいいというわけではない。変化にはリスクはもちろん、時には失敗を伴うことがあるからだ。
 失敗そのものは悪いことではない。肝心なのは失敗を失敗で終わらせてしまうのではなく、失敗を「成功の一部」にできるかどうかである。失敗で終わる人と、成功の第一歩にできる人の違いは、その人の「生き方」にある。

 そこで出てくるのが、リポジションを成功させる「生き方の4つの法則」だ。

2016年「今年こそ変わりたい人」が<br />今日から捨てるべき4つの考え方前向きに考え、行動する人に良い変化が訪れる
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 法則1 「志」「目標」を立て、達成のために腹をくくる
 法則2  ポジティブに物事を捉える。失敗したときも、危機でなく次のチャンスと捉える
 法則3 あなたのチーム、あなたの周りの人たちを大切にする
 法則4 何事にも感謝する心を持つ

 この法則の逆、「残念な考え」を挙げてみると、より理解しやすいだろう。
・人生の目標は「お金」だ
 ―「世の中結局おカネだ」と、つい考えてしまってはいないだろうか?
・いつもネガティブに考え、悪い方向へと進んでいく
 ―「どうせ」「無理」「ムダ」という言葉を、口にしてはいないだろうか?
・「オレ」が一番で、仲間はどうでもよい
 ―どこかで「自分が大事」という気持ちが優先してはいないだろうか?
・感謝の心より、妬み・嫉妬の心が先に立つ
 ―「あいつはいいよなぁ」と、人と比較するクセがついていないだろうか?

 一度しかない人生、あなただったら、どちらを選ぶだろうか。
 そういえば「残念な考え」を実践してしまっていたという人は、今日から捨ててしまおう。運・チャンス・良い人との巡り合いは、ポジティブな心の人にやってくる。いいリポジションも同様だ。あなたが自覚していない才能は、ポジティブな思考から開花する。そう、人生を楽しく充実したものにできるかどうかは、ちょっとした心の持ちようなのである。

 2016年をあなたにとって最高の一年にするべく、ぜひ4つの法則を実践してみてほしい。