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加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

米国への対抗心と主権への固執に染まる
習近平のサイバー戦略

加藤嘉一
【第67回】 2015年12月22日
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第二回世界インターネット大会に思う
米国と対峙する習近平のサイバー戦略

第二回世界インターネット大会で垣間見えた、習近平のサイバー戦略とは?

 「私はこれからの米中関係で、両国の国益が真正面からぶつかる分野は3つあると思っている。逆に言えば、この3つの領域以外は両国間の権益を融合し、協力体制を築き上げることが十分可能だ。その3つとは、軍事、通貨、そしてサイバーだ」

 2015年9月下旬、習近平国家主席による米国公式訪問に同行していた政府関係者がワシントンD.Cで私にこう語っていたのを、現在思い出している。

 私にそれを思い出させたのは、12月16~18日、中華人民共和国が自らイニシアティブを取るかたちで開催した第二回世界インターネット大会(World Internet Conference)にまつわる光景、とりわけそこに姿を現し、中国国内の政治会議を彷彿とさせるような“重要談話”を発表した習近平の眼差しであり、仕草だった。

 第一回同様、会議は上海市の南に位置する浙江省の鳥鎮で開催された。2002年~2007年、浙江省共産党委員会書記を歴任した習近平は、談話の冒頭で「私はかつて浙江省で長年勤務をし、何度もここ鳥鎮にやって来た。今日再び赴くことになったが、良く知るこの場所を懐かしく想うと同時に、その変化と発展に新鮮な気持ちを抱いてもいる」と語った。

 「世界インターネット大会は習近平主席が国家指導者に就任した後の2014年から始まりました。開催地が、習主席がかつて勤務した浙江省に設定されたことは偶然ではありません。それは、インターネット、言い換えればサイバー世界をテーマにしたこの会議が、習近平時代の産物であることを物語っています」

 同会議の主催機関の1つである中華人民共和国国家インターネット情報弁公室のスタッフが、北京で動向をウォッチしていた私にこう述べた。

 そしていま私は、ワシントンD.Cで太平洋の向こう側をイメージしながら、数ヵ月前にこの地で繰り広げられた米中首脳外交を振り返りながら(連載第61回「米国公式訪問で引き出された習近平政治の意外な素顔」参照)、本稿を執筆している。冒頭の政府関係者の話にもにじみ出ているように、サイバーという新しい分野は、習近平時代の中国が新たな発展空間と戦略的利益を追求していく上で核心的に重大であり、かつそのプロセスは超大国・米国のそれらと真正面から衝突する潜在性を秘めている。

 本稿では、習近平自らが古巣でイニシアティブを取った第二回世界インターネット大会をレビューしつつ、その角度から中国共産党政治が位置する1つの現在地を浮き彫りにすることをもって、中国民主化研究に関する2015年最後の考察としたい。

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加藤嘉一 

1984年生まれ。静岡県函南町出身。山梨学院大学附属高等学校卒業後、2003年、北京大学へ留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。北京大学研究員、復旦大学新聞学院講座学者、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、2012年8月に渡米。ハーバード大学フェロー(2012~2014年)、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員(2014〜2015年)を務めたのち、現在は北京を拠点に研究・発信を続ける。米『ニューヨーク・タイムズ』中国語版コラムニスト。日本語での単著に、『中国民主化研究』『われ日本海の橋とならん』(以上、ダイヤモンド社)、『たった独りの外交録』(晶文社)、『脱・中国論』(日経BP社)などがある。

 


加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

21世紀最大の“謎”ともいえる中国の台頭。そして、そこに内包される民主化とは――。本連載では、私たちが陥りがちな中国の民主化に対して抱く“希望的観測”や“制度的優越感”を可能な限り排除し、「そもそも中国が民主化するとはどういうことなのか?」という根本的難題、或いは定義の部分に向き合うために、不可欠だと思われるパズルのピースを提示していく。また、中国・中国人が“いま”から“これから”へと自らを運営していくうえで向き合わざるを得ないであろうリスク、克服しなければならないであろう課題、乗り越えなければならないであろう歴史観などを検証していく。さらに、最近本格的に発足した習近平・李克強政権の行方や、中国共産党の在り方そのものにも光を当てていく。なお、本連載は中国が民主化することを前提に進められるものでもなければ、民主化へ向けたロードマップを具体的に提示するものではない。

「加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ」

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