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米国利上げで浮上する世界経済の失速リスク

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第408回】 2015年12月22日
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米国は利上げで
“パンドラの箱”を開けた

12月16日、FOMC後の記者会見時のイエレンFRB議長 Photo:federalreserve

 12月16日、米国FRBは9年半ぶりに政策金利を引上げ、7年に及ぶゼロ金利政策を解除した。

 今回のFRBの決定は大きなイベントであったが、それによって世界経済が抱える問題が解決されたわけではない。むしろ、多くの問題が詰まった箱=“パンドラの箱”のふたを開けてしまったと考えた方がよい。

 金融緩和策によって、今まで箱の中に押し込めていた問題が逃げ出し、徐々に問題点が顕在化する可能性が高いからだ。今、世界経済が抱える問題を数え上げると、それこそ枚挙に暇がない。

 まず、懸念されるのは米国経済だ。ドル高や原油価格の下落などの問題を考えると、米国経済の行方は必ずしも順調というわけではない。2009年7月以降、回復してきた米国経済には、そろそろ陰りの兆候が見え始めている。今後、住宅や自動車のローン金利が上がると、堅調な消費活動が落ち込む可能性もある。

 また、わが国やEUが金融緩和を継続する中で、米国が金利を引き上げて金融政策の正常化に動き出した。主要国間の金利格差などを通して、世界の投資マネーが米国に引き寄せられることも想定される。

 さらに、新興国、特に多額の債務を抱えた諸国の経済は心配だ。既に金融市場では、トルコなど一部の新興国に信用不安の懸念が生じている。そうした問題がさらに拡大すると、世界経済の足を引っ張ることは避けられない。

 重要なポイントは、金融政策が変更される中で、米国経済が世界を牽引するパワーを維持できるか否かだ。それができないと、世界経済は再び下降トレンドに落ち込む可能性が高くなる。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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