三菱重工業傘下の三菱航空機が手掛ける「三菱リージョナルジェット(MRJ)」の商業化スケジュールが延期された。2017年4~6月としていた1号機の納入時期を18年後半へ変更する。当初計画から5年も遅れることになる。
延期の原因は、型式証明の取得プロセスの遅れにある。型式証明とは、航空当局が機体の安全性能を保証するお墨付きのことだ。
「今度は誰が責任を取らされるのか──」。延期を受けて、開発担当の三菱航空機、製造担当の重工航空機部門の幹部たちは戦々恐々としている。名古屋周辺に拠点を置くこれらの航空機部隊は、社内では「名航(めいこう)」と呼ばれる名門部門。今、重工本社と名航との不協和音が表面化しつつある。
すでに前例がある。15年4月、度重なる遅延に業を煮やした宮永俊一・三菱重工社長は、三菱航空機社長に原動機営業出身の森本浩通氏を据えた。「一貫して航空機畑を歩んだ川井昭陽前社長を更迭、門外漢の森本氏を登板させることで、名航部隊を破壊しようとした」(重工幹部)のである。
だからこそ、名航幹部は粛清を恐れる。「犯人捜しをしている暇などない。炎上している客船事業の二の舞いだ」(重工関係者)と嘆く。別の重工関係者は、「本当に必要なのは認証作業に通じたプロのエンジニア。約200人は足りない」と危機感を強める。