ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
コリア・ITが暮らしと経済をつくる国

マイナンバーが生活者の味方になるには?

韓国で試行錯誤の個人保護対策と日本の今後

趙 章恩 [ITジャーナリスト]
【第2回】 2016年1月8日
1
nextpage

今月から運用が始まった「マイナンバー」に、個人情報保護の側面などから懸念の声も聞かれるが、「住民登録番号」を半世紀近く前から導入している韓国では、これまでどのような危険が発生したのか。また、それらにどのような防衛策があるかを考えてみよう。

韓国で後を絶たない
個人情報の不正流出

hacker韓国では、住民登録番号を含む個人情報が、不正により大量に漏えいする事件が多数発生している
※写真はイメージ  (c)Fotolia_89071054

第1回では、韓国社会に住民登録番号が浸透し、それがITで管理されることで、行政や民間が提供するサービスの手続きが合理化され、国民生活に便宜を与えている現状について、いくつかの例を挙げながらお話しした。

 しかし、今月からマイナンバー制度の運用が始まった日本では、制度導入前から「国の監視が強化され、プライバシーがなくなる」「番号が盗まれたら個人情報を全部見られる」など、国民の間では、どちらかというと「マイナンバーは怖い」という意見が、マスコミの報道でもネット上の書き込みなどでも目立っていたようだ。

 たしかに、少なくとも「番号が盗まれたら……」という懸念に関しては、決して考え過ぎではないと思う。現実に韓国では、オンラインショッピングやオンラインコミュニティサイトで個人情報がハッキングされる事件が後を絶たないのだ。

 住民登録番号は個人情報の最たるものであり、戸籍、住所、税金、社会保険、年金、出入国記録などと紐づけられている他、銀行口座の開設やクレジットカードの取得、不動産からインターネット、携帯電話の契約に至るまで、広い範囲で登録が求められる。住民登録番号が盗まれるということは、これらの重要な個人情報が危険に晒されるということにほかならない。

 近年の大きな企業保有の個人情報漏えい事件といえば、2014年1月、KB国民カード、NH農協カード、ロッテカードの韓国大手クレジットカード3社で、のべおよそ1億400万人分の住民登録番号などが流出したケースがある。これはハッキングによるものではなく、3社のセキュリティシステム構築を請け負った会社の社員が、個人情報ブローカーへの売却目的で盗み出したものだ。

 少し前の話だが、2011年7月、中国人ハッカーが韓国の大手ポータルサイト「NATE」と、同社のソーシャルメディア「Cyworld」をハッキングし、3500万人分の住民登録番号を含む個人情報を盗んだことがある。

1
nextpage
スペシャル・インフォメーションPR
ビジネスプロフェッショナルの方必見!年収2,000万円以上の求人特集
ビジネスプロフェッショナルの方必見!
年収2,000万円以上の求人特集

管理職、経営、スペシャリストなどのキーポジションを国内外の優良・成長企業が求めています。まずはあなたの業界の求人を覗いてみませんか?[PR]

IT&ビジネス
関連記事
クチコミ・コメント
facebookもチェック

趙 章恩 [ITジャーナリスト]

ちょう・ちゃんうん/韓国ソウル生まれ。韓国梨花女子大学卒業。東京大学大学院学際情報学修士、東京大学大学院学際情報学府博士課程。KDDI総研特別研究員。NPOアジアITビジネス研究会顧問。韓日政府機関の委託調査(デジタルコンテンツ動向・電子政府動向・IT政策動向)、韓国IT視察コーディネートを行っている「J&J NETWORK」の共同代表。
IT情報専門家として、数々の講演やセミナー、フォーラムに講師として参加。日刊紙や雑誌の寄稿も多く、「日経ビジネス」「日経パソコン(日経BP)」「日経デジタルヘルス」「週刊エコノミスト」「ニューズウィーク」「リセマム」「日本デジタルコンテンツ白書」等に連載中。韓国・アジアのIT事情を、日本と比較しながら分かりやすく提供している。


コリア・ITが暮らしと経済をつくる国

韓国の国民生活に、ITがどれほど浸透しているか、知っている日本人は意外に少ない。ネット通販、ネットでの納税をはじめとする行政サービスの利用、公共交通機関のチケットレス化は、日本よりずいぶん歴史が古い。同時に韓国では、国民のIT活用に対する考え方が、根本的にポジティブなことや、政府が規制緩和に積極的で、IT産業を国家の一大産業にしようとする姿勢などが、IT化を後押ししていることも事実である。

一方の日本は、どうして国を挙げた大胆なIT化の推進に足並みがそろわないのか。国民生活にITが浸透している韓国の先行事例を見ながら、IT化のメリットとリスクを見極めていく。

「コリア・ITが暮らしと経済をつくる国」

⇒バックナンバー一覧