鳩山首相・小沢幹事長のダブル辞任で、民主党に激震が走った。後継の菅直人首相は、党内人事一新による「出直し」を図り、民主党の支持率は一時的に回復基調にある。しかし、前途には相変わらず問題が山積している。歴史的な政権交代を経てもなお迷走を続ける日本の政治に、明日はあるのか? 1980年代に戦後歴代3位となる長期政権を担い、日本が世界の大国に躍り出る基礎を築いた中曽根康弘元首相が、前回に引き続き「政治の進むべき道」を語る。外交・安全保障政策から財政・税制改革、そして国作りの大局観に至るまで、その提言は多岐に渡った。自らを「保守の王道」と称する中曽根氏は、今静かに日本の将来を見つめている。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 原英次郎・小尾拓也、撮影/加藤昌人)
なかそね・やすひろ/1918年生まれ。群馬県出身。東京帝国大学法学部卒。元衆議院議員、内閣総理大臣。1997年大勲位菊花大綬章受章。内務省、大日本帝国海軍を経て47年に衆議院議員初当選、以後連続20回当選。自由民主党で科学技術庁長官、運輸大臣、防衛庁長官、通産大臣、自民党総務会長、自民党幹事長などを歴任し、82年から87年まで内閣総理大臣(第71・72・73代)を務める。首相在任中に行なわれた主な政策は、国鉄・電電公社・専売公社の民営化、プラザ合意など。2003年政界を引退。現職は、財団法人世界平和研究所会長、新憲法制定議員同盟会長など。
――前回は、政局の行方や、民主党がとるべき外交・安全保障政策についてお話をうかがいました。日本にとって日米関係は確かに最重要事項ですが、アジアにおける安全保障の重要性も増しています。鳩山前首相も「東アジア共同体構想」を唱えていましたが、今後、日本はアジアにおいてどのような舵取りが必要でしょうか?
それを論じるには、「基調がどこにあるべきか」をまず明確にする必要があります。基本的には、対米および自由世界を中心とした安全保障というベースに立つべきでしょう。それは、いわゆる「保守の純粋性」と重なるからです。
現在は、中国も自由社会の理念を尊重して、対外政策を運営している。その限りにおいては、日本も善隣友好の理念を持って、アジアの発展や発言力の増大を目指し、隣国に協力していくべきでしょう。「東アジア共同体構想」も賛否が分かれているが、私も長期的な理念としてはそれに賛成です。それを一緒に推し進めていく相手は、やはり中国でしょうね。