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医療・介護 大転換

「新3本の矢」に「介護離職ゼロ」政策が含まれた意味

浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]
【第46回】 2016年1月6日
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高齢者介護を真正面から取り上げた
「新3本の矢」

 高齢者ケアの舞台で年末に大立ち回りがあった。安倍首相の肝いり施策の「新3本の矢」が発表されたことと介護大手のメッセージが損保ジャパン日本興亜ホールディングス(損保ジャパン)に身売りされることが決まったことだ。

 「介護離職ゼロ」が新3本の矢で謳われた。働く人の家族介護による離職をなくすために施設や在宅サービスなどの充実をめざし、それらの供給を計画より大幅に引き上げることになった。GDPを600兆円に増やす経済成長路線を新3本の矢の最大目標に掲げ、それを達成させるための施策である。

 政府の3大主要政策のひとつに高齢者介護が真正面から取り上げられたのは初めて。中でも、特別養護老人ホーム(特養)の増設や宿泊を伴う在宅サービスの拡充と並んで、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)が最終段階で盛り込まれた意義は大きい。

 従来の社会福祉法人や医療法人が中心的な担い手でなく、企業がその主役となるサ高住を柱に据えることになった。福祉分野が特別な法人をリーダーとする時代ではなくなり、一般の住宅・サービス業に移行せざるをえないことを示している。

 全く同じような見方ができるのがメッセージの買収劇だろう。

 メッセージは病院を手掛けてきた医師が創業者。有料老人ホームの経営に乗り出し、次いでサ高住に進出し、業界の最大手企業にのし上がった。企業とはいえ、トップが医師であることで業界や行政、霞が関などからの信頼が篤かった。高齢者の世界では、いわば「身内」の事業者。それが、損保業メガ3社の一角に買収された。市場経済の覇者に取り込まれたわけだ。

 この2つの「事件」を機に、高齢者介護が普通の企業が手掛ける普通の舞台へと転換していく、その勢いに拍車がかかることになるだろう。いわば、介護保険の発足に次ぐ、第2ラウンドに入ったともいえるかもしれない。当然のことだが、日本の名だたる企業が一斉に介護市場に参入するのも間近い。

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浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]

あさかわ・すみかず/1948年2月東京都中野区生まれ。東京都立西高校から慶應義塾大学経済学部に。1971年日本経済新聞社に入社。小売り・流通業、ファッション、家電、サービス産業などを担当。87年に月刊誌『日経トレンディ』を創刊、初代編集長を5年間勤める。93年流通経済部長、95年マルチメディア局編成部長などを経て、98年から編集委員。高齢者ケア、少子化、NPO活度などを担当。2011年2月に定年退社。同年6月に公益社団法人長寿社会文化協会常務理事に就任。66歳。

 


医療・介護 大転換

2014年4月に診療報酬が改定され、ついで6月には「地域医療・介護総合確保推進法」が成立した。これによって、我が国の「医療」「介護」大転換に向けて、第一歩が踏み出された。少子高齢化が急速に進む中で、日本の社会保障はどう大きく変革するのか。なかなかその全貌が見えてこない、医療・介護大転換の内容を丁寧に解説していく。

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