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“停滞”中国を救うオタク文化の目を見張る成長ぶり

中島 恵 [フリージャーナリスト]
2016年1月14日
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本当に中国?怪しい漫画喫茶で
日本の漫画を読み漁る人々

北京の雑居ビルの地下にある漫画喫茶で、日本の漫画を熱心に読む中国の若者たち

 「こ、このフロアでいいのだろうか? 本当にこんなところに漫画喫茶があるの?」

 昨年、北京で若者のオタク文化を取材中、中国人大学生から「清華大学の近くに日本式の漫画喫茶がありますよ」と教えられ、地図を見ながら歩き出したのだが、近くまで行って迷ってしまった。確かに清華大学の正門からすぐの場所で、ファストフード店が並ぶ雑居ビルの住所は、間違いなくここである。だが、「本当にここ?」と思うほど、その漫画喫茶「B3」は怪しい場所にあった。

 店名の通り、雑居ビルの地下3階に降りて、しばらく進むとようやく見つかった。アニメのポスターが壁にたくさん貼ってあったからだ。とはいえ、壁は剥げ落ちてボロボロ。不安な気持ちで入り口に入ったところ、店内には見渡す限り、日本語の漫画本がズラリと並んでいた。

『ワンピース』『黒子のバスケ』『キャプテン翼』『宇宙兄弟』――。漫画事情に疎い筆者でさえ知っている漫画本が、床から天井近くまで本棚にぎっしり収まっており、それを熱心に読んでいる若者がいる。しかも、こんなに怪しい雑居ビルで……。午後3時頃だったが、うどんやお好み焼きなどの日本料理メニューを注文して食べている人もいた。

 店内にいる学生らしき男の子に声をかけてみた。

 「日本のアニメにすごく興味があります。ストーリーが面白いし、主人公が魅力的だから。クリエーターの情熱も感じますね。勉強の合間にときどき来て、ここで息抜きしています。日本の漫画を読んだ後は勉強もはかどるので」

 答えてくれたのは、清華大学の3年生で経済を学ぶ学生だった。日本とのゆかりは特にないが、子どもの頃から見ていたアニメ好きの延長で日本語を学び、日本語の漫画も読めるようになったという。日本からちょっと遅れて郵送されてきた漫画雑誌を、むさぼるように読んでいる女子学生もいた。

 置かれていたのは100%日本語の漫画本や雑誌だが、筆者が店内にいる間、日本人の姿は1人もなかった。スマホへの依存度が日本よりもずっと高い中国で、少々手垢がついた漫画本を1ページ1ページ丁寧にめくっている若者の姿は健気であり、「ここはどこ? いったいいつの時代?」と思わせられた。

 日本好きな若者はどこの国にも一定数はいる。いわゆる「日本オタク」と呼ばれる人々だ。この漫画喫茶もそうした“特別な”空間なのだろうか? 中国中の若者が日本の漫画やアニメに夢中になっている、という極論を言うつもりはもちろんない。だが、筆者が以前ダイヤモンド・オンラインに寄稿した記事「南京大虐殺記念館の傍らで日本のアニメソングを叫ぶ 反日の街に生きる「日本大好き」な中国人たちの実像」で紹介した通り、日本のサブカルが心の拠り所となっている若者が少なからずいることもまた事実だ。

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中島 恵[フリージャーナリスト]

なかじま・けい/山梨県生まれ。中国、香港、台湾、韓国など東アジアのビジネス事情、社会事情などを新聞・雑誌などに執筆。著書に『中国人の誤解 日本人の誤解』『中国人エリートは日本人をこう見る』(共に日本経済新聞出版社)などがある。


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