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日本の温暖化対策は“産業革命以来”の厚い壁を克服できるか?

嶋矢志郎 [ジャーナリスト]
2016年1月25日
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地球の平均気温の上昇を、産業革命以前の2.0℃未満に抑えるパリ協定の努力目標は、不可能に近い

 フランス・パリで開かれていたCOP21(第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議)は、昨年12月中旬、これまでの枠組みである京都議定書に代わる「パリ協定」を採択して閉幕した。2020年以降の地球温暖化対策を規定する、法的に拘束力の緩い、新しい枠組みの誕生である。

 同協定では、温室効果ガスの削減に全ての国・地域が参加して取り組む枠組みを実現し、将来の気温上昇も2.0℃未満にとどまらず、1.5℃未満に抑える努力目標を明記した点で、歴史的な転換点となる合意である。先進国と途上国の厳しい対立をはじめ、複雑に絡む利害を激論の末に調整し、折り合いをつけることができたのは、偏に地球温暖化の抑止へ向けて、人類益ならぬ地球益の下で今こそ「差異ある共通の責任」を果たしていかなければ明日がないという、切羽詰まった危機感の共有であり、共通認識によるものである。

 努力目標の達成へ向けて、各国政府はいよいよ温暖化対策の実効性を高めるために、どのような仕掛けで取り組んでいくか、その実行力が問われてくる。もとより、努力目標の達成は至難の業で、各国政府が目標を引き上げるだけでは達成できない。既存の技術やビジネスモデルの延長線上ではない、画期的な新しいエネルギー・環境イノベーション戦略が求められている。

 COP21後の日本の課題は何か。短期ないし中期的には、約束草案の根拠とした30年までの長期エネルギー需給見通し、いわゆるエネルギーミックス戦略の実現へ向けて、具体的な道筋をつけていくことが先決であるが、その成否の鍵を握るのは、皮肉にも原発問題である。今年、日本はこの面からも原発のあり方を改めて見直す必要に迫られる重要な節目を迎えそうである。

 中長期的には、幸い日本のエネルギー・環境イノベーションは国際的にも定評があるため、これを武器に積極的な海外展開を介して、国際社会の温暖化対策の課題解決へ率先垂範し、主導力を発揮して、日本ならではの国際貢献を大いに果たしていくことである。

COP21で日本が問われる
短中期の原発問題と中長期の国際貢献

 1997年に京都で開かれたCOP3の「京都議定書」との大きな違いは、同議定書では米中両国の二大排出国を除く先進国40ヵ国とEUという一地域だけが温室効果ガスの法的な削減義務を負い、削減目標が未達成の場合は罰則もあったのに対し、パリ協定ではほぼ全世界を包含する196の参加国・地域が、同削減目標を自ら決める自己申告制で、達成への自己責任はあるものの、法的な拘束もなければ義務もないという点である。

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嶋矢志郎 [ジャーナリスト]

ジャーナリスト/学者/著述業。東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。日本経済新聞社(記者職)入社。論説委員兼論説副主幹を最後に、1994(平成6)年から大学教授に転じ、芝浦工業大学大学院工学マネジメント研究科教授などを歴任。この間に、学校法人桐朋学園理事兼評議員をはじめ、テレビのニュースキャスターやラジオのパーソナリティなどでも活躍。専門は、地球社会論、現代文明論、環境共生論、経営戦略論など。著書・論文多数。


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