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女子高生社長、経営を学ぶ。
【第19回】 2016年2月2日
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椎木里佳 [株式会社AMF代表取締役],椎木隆太 [株式会社ディー・エル・イー代表取締役]

「世界が変わっていく興奮」を味わおう

「かわいすぎる女子高生社長」として注目されている椎木里佳さん。パパは「鷹の爪」で有名なコンテンツ会社「ディー・エル・イー」の椎木隆太社長です。

 ダイヤモンド社から発売された『女子高生社長、経営を学ぶ』は、上場企業の社長であるパパの「起業から上場まで」のストーリーを追いつつ、ビジネスの肝がわかりやすく学べる1冊。本連載はその中から一部をご紹介します。

(取材・構成:佐藤智、竹村俊介、撮影:小川孝行)

アニメの常識が変わった奇跡の30分

里佳 「鷹の爪」ってすぐに人気になったの?

パパ 正直、前評判はひどかったね。2ちゃんねるとかに、「フラッシュアニメで金稼ぐなんて許せない!」「動かないアニメなんてアニメを冒涜している!」「紙芝居はウェブでやれ!」「テレビで流すなんて前代未聞!」とかさんざん書かれた。

里佳 期待されてたわけじゃないんだ!

パパ いやあ、それはそれは。ありとあらゆる罵詈雑言が浴びせられたんだよ、本当に。

里佳 心折れそう。

パパ でもね、実際に放送が始まったら空気がガラリと変わった。

 たぶん「炎上のネタを探そう」と興味本位で見ていた人たちが結構いたんだろうね。放送開始1〜2分は「やっぱり動いていない!」「想像通り酷いクオリティ」とか言ってたんだけど、数分すると「笑った」とか「意外とおもしろいんじゃない?」っていう声が出はじめて、7〜8分後には、一気に「鷹の爪おもしろい!」「今シーズン最高のアニメ!」「フロッグマンは神!」っていう書き込みで埋め尽くされた。バッシングが最初の10分以内でバタバタバタって変わっていったんだ。

里佳 流れが変わった!

パパ まさに、ね。アニメ業界の歴史を変えた30分間だったと僕は思ってる。
それからのフラッシュアニメは、テレビだけでなく映画館などでも幅広く使われて、そのキャラクターもすごく愛され、ビジネス的にも注目されるようになった。

里佳 狙いどおりって感じ?

パパ うん。ていうか、僕がソニーに入った頃、ソニーが毎年毎年人びとの生活を変えるような革新的なものを世に出していたことを思い出した。僕がしたことはまだそのはるかミニチュア版だけど、「小さな組織や個人でも世の中が変えられるんだ」ということを実感したんだ。こういう興奮を、里佳にも、そして、もっとたくさんの人にも感じてほしいなと思ってるよ。

フロッグマンの逆転ストーリーと伝説のイベント

里佳 テレビで火がついて、そっからどうなったの?

パパ 「鷹の爪」自体が、「なんだかこれまでにないアニメが始まったぞ」って注目されたでしょ。すると、絶対に「いったいこんなもの誰が作ったんだ?」ってことになると思った。

里佳 たしかにね。気になるよね。

パパ その展開に持ち込めたら、パパには勝算があったんだ。なぜかというとフロッグマンには「人が応援したくなるストーリー」があるから。

 彼は映画人として夢破れ、東京から逃げ、島根に引きこもって、負け組の典型みたいな人生を歩んでいた。そこからパソコン一台で起死回生の「鷹の爪」を生み、既存勢力をなぎ倒してヒットクリエイターに成り上がったわけ。これは確実に注目が集まると思って、フロッグマンのバックグラウンドも含めて新聞各社やテレビ局に売り込んだの。そしたら、取材が来て、取り上げてもらって、DLEも知ってもらえたんだ。で、そうやって「おもしろい奴らがいるぞ」と応援団も増えていったんだ。

里佳 作品だけでなく、今度はフロッグマンの「負け組からの成り上がりストーリー」も含めて営業しちゃえ、みたいな。

パパ そうね。だから、前に里佳に「あなたの持ってるストーリーが大切なんだよ」って言ったの。

里佳 「鷹の爪」がウケて、応援する人たちが増えた後はどうなったの?

パパ 六本木ヒルズのTOHOシネマズで徹夜イベントをやろうと思った。夜中0時から朝まで一気に「鷹の爪」のテレビシリーズを映画館で観るというもの。早速、TOHOシネマズの人に打ち合わせにいったんだけど。

里佳 むこうの人は「鷹の爪」を知ってたの?

パパ 全然知らなかった(笑)。

 「すみません、『鷹の爪』ってまったくわからないんですが……」って言われて、「いま、カルト的な人気があるんです!」って説明した。で、「そうなんですね。じゃあ、どれくらいの会場を用意すればいいですか?」という話になって、「一番大きなところでお願いします」って。そしたら、「700人ですよ、それはちょっと難しいんじゃないですか?」って言われたんだ。

里佳 集まらないってこと?

パパ そう。「これまで700人の会場のチケットがソールドアウトしたのは『踊る大捜査線』と『スターウォーズ』だけですよ」と。「考えているより700人埋めるのってそうとう難しいですよ」と忠告された。

 でも、自信があったんだよね。だから、「ガラガラだとファンの人が逆に冷めますよ。200人程度の小さな会場にしてソールドアウトするくらいがちょうどいいんじゃないですか?」って言われたけれど、700人の会場で開催することにしたの。最後には、「まあ、やるのは自由ですのでどうぞ」とか言われちゃって(笑)。

里佳 で、どうなったの? 

パパ なんと発売1時間で完売!

里佳 すご!

パパ それで、TOHOシネマズの担当者の方もびっくりしちゃって。「実は、『踊る大捜査線』も『スターウォーズ』も700人分売り切れたのはイベント当日になってからだったんです。発売すぐに売り切れたのは、『鷹の爪』が初めてです。『鷹の爪』ってこんなにすごいんですか!」って言われた。

 もちろん自信はあったんだけど、僕たちも「なんだかすごいことになってるぞ」って実感したんだよね。

里佳 すごいね。まさに熱狂。

パパ 本当にそう。このコンテンツをこのまま伸ばしていけば、すごい熱狂を作っていけるに違いないとみんなが確信した瞬間だった。

 TOHOシネマズの人もチケットが即完売した「鷹の爪」を観ようとイベントに参加してくれた。そこで、「鷹の爪」のファンになってくれたんだ。

里佳 そこから、マナームービーをすることになったの?

パパ うん。「『鷹の爪』の魅力がわかりました」って言ってくれて、そこで僕が「何かやらせてください」ってお願いしたの。で、「映画館のマナームービーがおもしろくないっていわれてるんですよね。DLEのコスト負担でマナームービーを作ってくれるならば流しますよ」と。で、担当者さんの気が変わらないうちに1週間くらいで製作して、「これでお願いします!」と持っていった。

里佳 そんな経緯があったのね。でも、よく9年も続いているね。

パパ 最初の頃はお客さまからクレームがきて、各劇場の支配人さんたちも「打ち切りにしたい」って言ってたみたいなんだけど、六本木ヒルズの熱狂を見てくれていたので、本部の方にはなんとかおおめに見てもらえた。そのうち、お客さまからの喜びの声が多くなって、支配人の方々も応援してくれるようになった。そんなみんなに支えられて継続できているんだ。

里佳熱狂を作り、多くの人に応援してもらうようにするのって大事なんだね。

 そうやって「鷹の爪」がテレビで話題になって、フロッグマンが話題になって、伝説のイベントが生まれて、長く愛されるマナームービーが生まれて……。

パパ そういうキャッシュカウを持つことができたから、その後もどんどんチャレンジをすることができるようになって、いいサイクルが回るようになったんだ。

里佳 それで上場に向かっていくわけね。パパ、やるねえ。

※明日に続きます

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椎木里佳 [株式会社AMF代表取締役]

1997年生まれ。現役の高校3年生で、実業家。「女子高生社長」として知られ、都内の高校に通いながら、六本木ヒルズに事務所を置く株式会社「AMF」を経営。小学校のときにホリエモンの活躍を見て、社長業に興味を持つ。中学3年生のときに起業。現在は、学業のかたわら、スマートフォン向けアプリの開発や各種イベント企画プロデュースなどの事業活動を展開している。父は「鷹の爪」で有名なDLEの社長、椎木隆太氏。

椎木隆太 [株式会社ディー・エル・イー代表取締役]

慶応義塾大学経済学部卒業。「秘密結社 鷹の爪」などをはじめとする、さまざまなキャラクターを保有。1991年4月ソニー株式会社入社。1992年よりソニーインターナショナルシンガポール駐在。1995年ソニーベトナム・ハノイ支社長就任。2001年ソニー株式会社退職後、有限会社パサニア(現株式会社ディー・エル・イー)を設立し、代表取締役就任。現在に至る。


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